

2020年4月30日
【広島大学の若手研究者】研究機関連携コロナウイルス制圧を
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院医系科学研究科(医)助教
小田 康祐 さん
専門はウイルス学。立体構造を解析、ウイルスの本質に迫る
ウイルスの種類の一つであるパラミクソウイルスは、麻疹ウイルスやヒトパラインフルエンザウイルス(風邪の原因)、流行性耳下腺炎ウイルス(おたふく風邪の原因)、ニパウイルス(ヒトに感染する致死率の高いウイルス)など、人や動物に感染して感染症(病原性)をもたらす重要なウイルスが数多く含まれています。
現在のところ、ワクチン接種が有効なパラミクソウイルスは麻疹ウイルスや流行性耳下腺炎ウイルスに限られ、他のパラミクソウイルスに対して効果をもたらす薬はいまだなく、治療薬の開発が望まれています。
パラミクソウイルスは、高い病原性を発揮するのに必須となるアクセサリータンパク質と呼ばれるウイルスタンパク質を生み出します。
タンパク質は三次元の状態で機能を持っており、多くの複雑な機能を持つアクセサリータンパク質に関する理解は、まだ十分に進んでいません。
私はアクセサリータンパク質を標的にした治療薬の開発を目指し、このタンパク質の立体構造の解析をもとにしながら、病原性の解明について研究を行っています。
アクセサリータンパク質の立体構造を世界で初めて明らかにでき、その成果としてアクセサリータンパク質が感染細胞内で、どのように機能するのか、詳細に解明することができました。
ウイルス学会で研究成果を発表する小田さん
平たく説明すると、通常はウイルスが人に感染すると、自然免疫が働いてウイルスを排除しようとします。しかし、アクセサリータンパク質は自然免疫を抑制するように働いて感染を成立させ、人の細胞から外に出ることを促進させており、そのメカニズムを解明しました。
また、アクセサリータンパク質の立体構造をもとにして、抗ウイルス薬を設計できる可能性も見出しました。ワクチンの開発が困難なパラミクソウイルスの治療薬や予防薬を開発し、医学や社会に貢献することが夢です。
研究では仮説を立てて実験で証明していきます。予想外の実験データが得られることがあり、解釈が困難な場合もあります。専門分野以外のことに取り組む必要性も生じてきます。
ウイルス学会の様子
ただ、そのようなデータが得られると研究に深みが増し、詳細なメカニズムの解明につながります。研究をより面白くするためには、実験データの小さな変化を見逃さないことが大切です。
まだまだ分からないことが多いウイルスですが、日本の多くの研究機関は連携を取りながら、このウイルスを制圧するために緊急に研究を進めています。
広島大では、その中でできることを探し役割を全うすることを目指しています。
※プレスネット2020年4月30日号より掲載
過去の「広島大学の若手研究者」はコチラ
2020年2月27日
【広島大学の若手研究者】新しい教育の形を提示していきたい
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大森戸国際高等教育学院 特任助教
サリー・チャン さん
専門は留学生の日本語教育。ペアワークが日本語の習得を促進
私は香港出身のオーストラリア育ち。幼い頃、香港では日本のアニメがはやっていて日本語に興味を持ちました。本格的に日本語の勉強を始めたのは中学生から。オーストラリアの中学校では、日本語が必修科目だったことがきっかけになりました。
日本語の勉強を始めてみると、私の母語は中国語だから、漢字は理解できましたが、それ以外のことは本当に難しくて(笑)。
日本語を学習する外国人が、第二言語(日本語)の習得を促進できるような環境を作っていけたらなと思ったのが研究に取り組む出発点になりました。
研究のキーワードになっている言葉です。外国語である第二言語を学習する人は、母語の影響を受けてしまい、学習中の第二言語に不自然さ、つまり負の言語転移が生じてしまいます。
例えば母語が日本語だと、英語のrとlの発音に不自然さが残ります。私は第二言語である日本語を習得する留学生が、どうような学習をすれば誤用をしないですむのか。文化的、環境的な側面から研究を進めてきました。
言語能力が似た者同士がペアワーク、グループワークで学習すると、言語習得が促進されることが分かってきました。
そのためには、従来の日本の典型的な教室のスタイル、つまり教師の一方的な授業スタイルを改める必要があります。
学生同士がディスカッションをするような作業を増やすなど、留学生が主体的に活動できる授業が求められます。主体的な授業が誤用の気付きを促します。
教室だけでは学習の時間が限られます。日本語能力を向上させるためには、教室外でも教室で絆を深めたグループなどで積極的に日本語を使う環境をつくることが大切です。
留学生は教室では日本語を話しても、一歩外に出ると日本語を話さなくなります。日本語が飛び交う環境の中で、自分を安心させたいために自然に母語を話せる人と、母語で会話するようになります。日本語能力が同じレベルの人が集まることで安心感が生まれ、日本語を使う環境も芽生えます。
自分の研究を実践に展開できることですね。ペアワークやグループワークを通して、日本語能力が上達した留学生の姿を見ると、本当にうれしくなります。私の研究の活力の源にもなっています。
どうような工夫をすれば、先生の教育のモチベーションと留学生の学習意欲が高まるのか、ということに興味を持っています。
伝統的な日本の教育を行っている日本の先生に、新しい日本語教育の可能性や方向を提示していきたい、と思っています。
※プレスネット2020年2月27日号より掲載
過去の「広島大学の若手研究者」はコチラ
2019年10月24日
意外と知らない大学TOPICS
「大学は大学生だけが行く場所」なんて思っていませんか?
実は東広島の各大学では地域住民を対象にしたさまざまな取り組みを行っているそう…!
その一部をご紹介🙌
広島大学は、2019年度に「地域の元気応援プロジェクト」を実施していました。学生・教員・県内の地域団体の3者でチームを組み、地域活性化を目指す取り組みに、広島大が50万円を限度額に助成するという内容でした。
11件の応募があり、8件を採択しました。2020年2月まで活動に取り組み、3月に報告会を行ったそうです。
東広島市関連のプロジェクトは、志和町のものづくりスペース「つくれば工房」が、 統合生命科学研究科の彦坂暁准教授たちと連携。志和堀の古民家図書室ほたる荘と、併設する蔵を改修したものづくりスペースをハブとして、地域と大学を結び、世代を超えた学びの拠点をつくることを目指しています。
具体的には、IT/ⅠoT技術を実践的に学べる環境の整備や、子どもたちが遊んで学べるスペースづくり、サイエンス&テクノロジーワークショップの開催などに取り組んだそうです。
広島国際大学は、市民を対象にした「広国市民大学」を開講しており、「こども未来コース(応用編)」では、2019年度、30~50代の40人が入学。全12回の講座を通して、子どものやる気を育てるメカニズムや思春期に寄り添った上手な対応の仕方などを学んでいく。
2019年9月25日に行われた5回目の講座では「思春期の〝厄介さ〟は〝こころ〟の厄介さ」がテーマでした。広国市民大学の吉川眞学長が、実例を挙げながら、家族のあり方 や思春期の乗り越え方などについて話した。
3児の母親の西条町下三永の主婦は「毎回学ぶことが多く、子どもや夫に対する言葉掛けに気を付けるようになった。何より、自分の時間を活用できてリフレッシュしている」と笑顔だったそう。
木藤教授(右)の指導で、バランス機能を維持する運動や心臓の働きを助ける運動などに取り組む利用者
広島国際大学が2019年2月に開設した「しあわせ健康センター」では、医師や理学療法士、言語聴覚士などの専門の資格を持つ27人の教員が、介護予防や認知症予防、子育て支援など、地域の人たちの健康に関する相談に無料で応じています。
利用者の80代女性は「自立した生活を長く続けて、いつまでも在宅で過ごせるように」と週1回のペースでセンターに通っています。
総合リハビリテーション学部の木藤伸宏教授は
「相談者に合わせたトレーニングを提案しています。初回にじっくりと時間をかけたカウ ンセリングを行い、相談者がどういった問題を抱えているのかをまず理解した上で、治療が必要かどうか、その場合何科を受診すべきなのか、などをアドバイスしています。痛みや筋力低下の背後には基礎的な疾患が潜んでいることも。まずは気軽に相談を」とのこと。
利用者は「親切で丁寧に指導してくださるので、安心して続けることができる」と笑顔でした😊
電話番号は同大総合リハビリテーション学部事務室0823(70)4851(平日9時~17時受付)。
大阪、奈良、和歌山、広島、福岡の1府4県にわたって6キャンパスある近畿大学。
「規模の大きな大学のため工学部が広島にあることを知らずに受験する生徒も多い」という悩みから、近大工学部は近大マグロがロボット化した「マグロボ」というキャラクターを作り、工学部が広島県にあることをアピールしています。
マグロボが登場する動画を作成し、2019年7月からテレビCMを放送したり、インターネットで公開しています。
現役の学生や、近大の附属高校生らが出演し、広島市のマツダスタジアムや東広島のキャンパスで撮影。本格的なCGを使っており、映画さながらの仕上がりです!🎥✨
他学部の生徒からも「インパクトが強い!」などと、好評でした。
マグロボを発進させるのは近大工学部の6学科のメンバー。ものづくりや技術者の格好良さを若者に伝えることもこの動画の狙いだそうです。
プドーステーションを利用する学生。
東広島市高屋うめの辺にある近畿大学工学部は、キャンパス内に宅配便の受け取りと発送ができるロッカーを設置しており、学生たちにも大好評!
「PUDO(プドー)ステーション」というロッカーで、B館渡り廊下に設置されています。ヤマト運輸の会員制サービス(無料)に登録すると、ここのロッカーを指定した発送や受け取りの手続きがパソコンやスマートフォンで簡単にできちゃいます📲
利用時間は8時~20時。
ロッカーを利用したことのある化学生命工学科の生徒は「対面せずに発送・受け取りできるのがとても便利」とのこと。
地域住民も利用することができ、担当者は「気軽に利用してください」と呼び掛けています。
地域住民が利用する場合は、
杵原中央の交差点から近大通りへ上がり、最初の四つ角を左折
↓
来客者駐車場の案内看板とおりに右折しゲートをくぐる
↓
コンビニ手前にある来客者駐車場へ駐車
駐車券は守衛室にて処理してもらえるので駐車料金もかかりません。
学生でなくても使える設備・講座があるんですね!✨
施設を利用される地域の方と交流できる機会に繋がるかもしれませんね。
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
広島大学キャンパスガイド
広島大学が行っている「キャンパスガイド」では、学生ボランティアが東広島キャンパス内を案内してくれます。
大学のすごさを知ったり、身近に感じられたりするツアーを紹介!学生の案内を動画で配信。
ガイドツアーを疑似体験してみよう!✊
予約なしで自由に参加できるガイドツアー。
広島大学の学生ボランティアが案内してくれます。その日の参加者の要望に応じてコースを設定。
毎週金曜日の13時~15時(約2時間)。法人本部棟2階に集合。問い合わせは広島大学地域連携部門へ。
電話:082-424-6134
※現在「新型コロナウイルス」感染拡大防止のため、キャンパスガイドを中止しています。
自然豊かな東広島キャンパスの南半分を一望できる。普段は施錠されており、一般の人はガイドツアーでしか入ることができない場所。
広島大学のキャンパスの面積は約250へクタール、東京ドームの53個分。国立大学の単一キャンパスでは全国3位の広さをほこります。
工学部には国内の大学の中では最大の規模を持つ試験水槽があります。CO2排出量の少ない船の開発に活用されている企業からのオファーも多いそうです。
実験に使う両生類を飼育。世界にはこのようなリソースセンターが4つあるのですが、その中でも複数を飼育するのは広島大だけ。
設置50年という歴史も世界一!
広島大学総合博物館の統一キャラクター「ヒロッグ」のモチーフもカエル🐸一般の人も自由に見学できます♪
開館は平日10時~17時。入場無料。
恐竜のフンにタッチ🦖✋
「環境と人間との共生」をテーマに、大学の紹介、宇宙・地球、里海、里山の4つのコーナーで構成。
触ってもいい化石など楽しい仕掛けが盛りだくさん。
開館は火~土曜日の10時~17時、入館無料。
2019年5月に誕生した中国産業とのコラボカフェ。キャンプをテーマにしたインテリアがおしゃれ。
コーヒー1杯200円とリーズナブル
ランチタイムには、地元のパン屋のサンドイッチなどが並び、自動車学校の案内、留学生の相談窓口もあります。一般の人も利用可能。
営業は平日の9時30分~17時30分(ラストオーダー17時)。
池と湿地、アカマツ林など大学移転前からの里山環境が維持され、貴重な動植物を観察できます。 メダカやカエルも生息。
この周辺の渓流と湿地、ぶどう池を含めて、自然を歩いて鑑賞・体験できる屋外ミュージアム「発見の小径」となっています。
自然の中を歩くのは気持ちいいですよ~
どうでしたか!? 身近にあるけどまだまだ知らないことが多いのではないでしょうか?
興味がわいた人は、ぜひ広大に行ってみてくださいね!!
※プレスネット 2019年10月24日号より掲載
\オススメ記事/
2019年10月24日
知らんかった!大学の『へぇ~』😮
東広島市は大学や研究機関が集積する学園都市。
みんなが意外と知らない〝大学のこと〟を大特集!
聞いて思わず『へぇ~』と言ってしまう大学のあれこれを紹介しちゃいます!🎓
🎓「企業人事担当者が見る大学イメージ調査」で、広島大学が「対人力」全国1位🙌
※日経HR、日本経済新聞社による調査
評価の基準は「コミュニケーション能力」や、「ストレス耐性があるか」など。
🎓広島大東広島キャンパスの敷地面積は東京ドーム53個分
広っっっっっっ!!😳
国立大学の単一キャンパスでは全国3位の広さだそう。 広すぎて迷いそうですね(笑)
🎓広島大総合博物館には恐竜のうんこの化石がある
※しかも、うんこの中に宝石がある
いや、色々と衝撃過ぎ!
めちゃくちゃ気になる… なんと実際に触れるそう!博物館は一般の人も自由に見学できるみたい。
🎓広島大が所有する「かなた望遠鏡」は全国有数の大きさ
なんと有効径(対物レンズ)は1.5m!人1人分の大きさ!
ここまで大きい望遠鏡は全国でも中々無い大きさだそう🔭
🎓近大工学部の受験生で、工学部が広島にあることを知らない人は意外と多い
実は大阪、奈良、和歌山、広島、福岡の1府4県にわたって6キャンパスある近畿大学。
意外と東広島に工学部があることを知らずに受験する生徒が多いよう…。
🎓近大工にはフードトラックが来る
不定期で構内にやってくる移動販売車(フードトラック)があるらしい…!
ホットサンド、焼き鳥、シュークリームなどを販売!
フードトラックは10時30分~15時に来るそう😋
🎓近大工は国家プロジェクトとして金属3Dプリンターの研究をしている
テレビでもたまに紹介されている3Dプリンター。
「シリコンなどを加工する」というのはよく聞きますが、金属を加工するってすごい!
🎓近大工は5人のプロ野球選手を輩出🏏
知らなかった!
佐々木修(近鉄バファローズ)1985年3月卒
佐野重樹(近鉄バファローズなど)1991年3月卒
中本和希(近鉄バファローズ)2004年3月卒
中元勇作(東京ヤクルトスワローズ)2011年3月卒
森原康平(東北楽天ゴールデンイーグルス)2014年3月卒
普段試合で活躍している選手が卒業生だったとは…!
🎓小惑星リュウグウの岩の分布を詳細に測定したのは近大工の教授
「NASAの何歩も先行く快挙」と世界中で称賛された「はやぶさ2」小惑星リュウグウへの着陸。
その着陸地点含む小惑星リュウグウの岩の分布を詳細に測定したのが 近畿大学工学部機械工学科 教授の
道上 達広(みちかみ たつひろ)教授!
🎓広国大に新しく完成した人工芝の陸上競技場は地域住民も借りることができる
「健康スポーツ学部」の実習で使用する陸上競技場を今年度に新設!
サッカーから陸上競技まで!コートがとてつもなく広くてすごい!
🎓広島国際大学の講堂の席数は、県内のホールの中でも最大級
なんと2150席も! 地域住民も利用できるようです。
🎓広国大の寮の定員数は全国7位
※定員は呉キャンパスとの合計
国際大学の寮室はなんと合計1,602室!(内、東広島キャンパス878室、呉キャンパス692室)
寮生活も充実していますね♪
🎓国家資格の義肢装具士の勉強ができる大学は西日本で広国大だけ
西日本ではここだけでしか学べないという技師装具士を目指す学生が集まって、日々切磋琢磨しているんですね!
思わず『へぇ~』と言ってしまうようなことばかり。いかがでしたか?
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
【広島大学の若手研究者】ニワトリの遺伝資源保存法を確立
広島大学の若手研究者に着目し、その研究内容についてインタビューしました!🎤
今回お話を聞いたのは
大学院生物圏科学研究科助教
中村隼明(なかむら よしあき)さんです!
始原生殖細胞に着目
ニワトリの遺伝資源保存法を確立🐓
研究テーマを一言で言えば「動物を細胞レベルで保存する研究」です。もっとかみ砕いて表現すると「現代版のノアの箱舟計画」といったところでしょうか。
ギリシャ神話の「ノアの箱舟計画」では、箱舟の中でさまざまな動物種の雄と雌のペアを冬眠させます。大洪水の後、眠りから覚めた動物は、交配して子孫を増やします。
僕の目指す「箱舟計画」では、液体窒素タンクの中で、次世代に遺伝情報を伝達することができる唯一の細胞である生殖細胞を冬眠させます。
ただ、生きた動物がいないので、交配によって子孫を増やすことができません。このため、凍結した生殖細胞を溶かして、その細胞から個体を復元する必要があります。
僕の研究は生殖細胞から、次世代の個体を復元する技術を開発し効率化することです。
小学生のとき、大干ばつの影響で、僕の住んでいた地域からベッコウトンボが姿を消しました。そういう生き物を、人間の手を介して保護していきたい、と思ったのが、動物の種の保存に興味を抱くきっかけになりました。
哺乳類の発生工学分野では、18世紀に人為的に精液を生殖器に注入する人工授精の技術が生み出され、戦後は精液の凍結保存技術が実現しました。
このことが、家畜生産の現場に人工授精の普及をもたらし、今では乳牛の99%、肉牛の95%が人工授精によって生産されています。
しかし、鳥類は哺乳類ほど種を保存する技術が十分ではありません。鳥類の卵は大き過ぎて、凍結することができないことがネックになっているからです。
研究で着目したのは、ニワトリとウズラをモデルにした始原生殖細胞です。
始原生殖細胞とは、胚(鳥類では卵の中の時期)が発生する過程で出現する精子や卵の起源細胞のことです。
その始原生殖細胞は、将来の生殖層(オスであれば精巣、メスであれば卵巣)に移動する過程で、一過的に血液中を循環することが知られていました。
この性質を利用して、血液中や生殖巣から取り出した始原生殖細胞(ドナー)を、他のニワトリの胚(宿主)の血液中に移植する技術が開発されました。
ドナー始原生殖細胞は、宿主胚が持つ能力によって、生殖巣へ移動して生着し、機能的な精子や卵になります。ただ、これまでの技術の限界として、始原生殖細胞の操作の根幹となる採取や凍結、移植の効率が極めて低いことが課題でした。
そこで、これらの課題を一つずつ解決することで、始原生殖細胞を凍結して、ニワトリやウズラを半永久的に保存する技術を確立しました。
特に、宿主胚自身が持つ始原生殖細胞を除去して、ドナー始原生殖細胞由来の精子や卵だけを作らせる技術は、凍結した始原生殖細胞からニワトリを効率的に復元することができるため、世界から注目されています。
遺伝資源は、一度損失した場合、再び取り戻すことができません。このため、現存する動物から積極的に遺伝資源を収集・凍結保存することは急務です。
日本鶏などの希少な品種は、年間産卵数が少ないため、得られる受精卵の数が制限されますから、まさに保存は必須です。
家畜化された鳥の遺伝資源の保存は、鳥インフルエンザの脅威に対抗するためにも、大切な意味合いを持ちます。
将来的には、繁殖能力の高いニワトリに、絶滅危惧種のライチョウを生ませてみたい、と思っています。どちらもキジの仲間。できないことはないと思っています。
※プレスネット2018年4月5日号より掲載
今までの若手研究者はコチラ
2019年10月24日
大学のあの人って実は凄い!?楽しく学べるアプリの開発者
皆さんが通っている大学のあの先生・あの人が実は全国や世界で活躍しているって知っていましたか!?
広島大学 学長特任補佐 北村拓也さん
にインタビューしました!
大学3年生だった2013年に、小説家になりたい人を支援する電子書籍の出版会社を設立して学生起業家に。
翌年には 「ゲームにはまる熱量を学習に変えたい」 とゲーム要素を取り入れた学習アプリの開発会社を設立。
代表アプリ「猫と学ぶ将棋の定跡シリーズ」が2015年、GooglePlayで累計3万ダウンロードを達成し、新着有料ゲームランキング4位、有料ゲームランキング32位に輝いた🎮
2017年には、小・中・高生向けのプログラミングスクール「テックチャンス!」を開講。
現在全国16校で150人以上が学んでいるんです!ビジネスコンテストやプログラミングコンテストにも数々出場し、これまでに40件以上の受賞歴を持つそうです!
2019年2月には、第15回キャンパスベンチャーグランプリの全国大会に出場。セキュリティーの基礎を楽しく学べる「Cyshipサイバーセキュリティーの体験学習アプリ」で経済産業大臣賞、ビジネス大賞などを受賞しました。
学習工学の観点から、遊びながら楽しく学べるアプリの開発に力を入れています。
「洗脳的教育からの解放」 を人生のテーマに「誰もが自分の人生目標を持って生きられる世界」を目指しています。
現在、学生時代に立ち上げた会社を含む5社で代表取締役や最高技術責任者などを務める北村さん。
中学時代は、ネットのオンラインゲームにはまって不登校でした。学校へ行ったり行かなかったりの生活に周りからは「落ちこぼれ」と呼ばれていました。
大学進学後、1年生の授業でプログラミングに出合い、その面白さに引き込まれました。
「スマホもパソコンも自動車も、ロケットの発射まで、プログラミングされていると知って感動した。
その後、独学で技術を磨いて作ったアプリが評価され、僕にとってプログラミングが自己実現のための最強のツールになった。
あの頃の僕と同じように、生きづらさを感じている子どもたちに自己表現の楽しさを知ってもらいたい」
とプログラミングスクールを開校しました。
大学院では学習工学の第一人者、同大大学院工学研究科学習工学研究室の平嶋宗教授に師事し、工学の分野から人が学習する仕組みを探りました。
「ITの力で教育を変えよう」と、大学の研究で得た知見なども活用して、遊びながら楽しく学べる学習アプリを40件以上開発しました。
「主張」「根拠」「理由付け」の三大論法の考え方に着目して開発した、論理的思考力を育成するソフトは、2017年の人工知能学会で優秀賞を受賞しました。
北村さんは、2019年9月に博士課程を修了しました。大学にはやはり、行ったり行かなかったりの生活だったというが「落ちこぼれ」ではない。
実力主義の研究の世界で、審査のある国際学会への出席や論文の執筆を精力的にこなし、2年課程の修士を1年半、3年課程の博士を2年で終えました。
「僕はただ社会不適合者なだけ。幸い僕の分野はパソコンさえあればどこでも研究ができたので、好きなところで好きなことをやっていた」
と笑っていました。
中学時代の不登校の経験から、教育への課題意識は人一倍強い。「洗脳的教育からの解放」を人生のテーマに、これからは「誰もが自分の人生目標を持って生きられる世界」の実現を目指します。
学校の先生や親が決めた目標ではなく、自分で決めた目標を生きた方が最高の人生になるとの思いから、既存の学校教育からはみ出した子どもたちの支援をする「財団」や「学校」を作りたいと考えています。
「まだ“ロマンとそろばん”の“そろばん”の方が全然できていない。5年以内には実現させたいけれど」
と冗談を交えながら目を輝かせていました✨
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
大学のあの人って実は凄い!?「はやぶさ2」の有機物分析をけん引
皆さんが通っている大学のあの先生・あの人が実は全国や世界で活躍しているって知っていましたか!?
広島大学大学院理学研究科教授
薮田ひかる(やぶた ひかる)さん
にインタビューしました!
研究テーマは宇宙に存在する有機物の化学進化
生命を構成する主要物質である有機化合物を手掛かりに、「宇宙における生命の起源に迫りたい」と思いをはせていました。
「この研究分野にとって大きなステップになる」と力を入れているのが、小惑星探査計画「はやぶさ2」。
小惑星リュウグウから採取した試料が2020年末に地球へ帰還した後、翌年からその試料を分析する役割を担っていました。
「はやぶさ2」には立案段階の10年前から参加、思い入れも強いです。「小惑星は太陽系が誕生した46億年前の原型を記録しています。太陽系形成史を探ることは生命の起源を探ることになります」。
学生時代は地球の岩石中の有機物を分析し、地球史における生命進化について研究しました。地球外物質の分析は、博士号を取得してからです。
「20~30代に培った基礎力があるから今の自分があります。今後も一つ一つの積み重ねを大切に、将来の宇宙探査を支えたい」
と抱負を語っていただきました。
小さいときに漠然と抱いていた好奇心が、研究に進む足がかりになっていました。筑波大学では化学を専攻。宇宙化学の講義に興味を抱きました。
化学の手法で太陽系の起源を明らかにすることが、生命の起源と進化を解明することにつながることを知りました。
「得意の化学で、自分の祖先を遡ることができる」
と同大学の大学院に進み研究者の道を歩むことを決めました。
学生時代当時は、地球の堆積岩の研究を通して化学分析技術の基礎をしっかりと習得し、その後は、宇宙から降ってくる隕石や彗星塵の分析に専門分野を広げました。
これを機に、「地球外有機物研究のパイオニアのもとで自分を鍛えたい」と、米国のアリゾナ州立大学とカーネギー研究所で博士研究員として研究の修業に励みました。
35歳で帰国したとき、米国で4年間の研さんを積んだことが認められ、JAXAから「はやぶさ2」プロジェクトへの参加を打診されました。
探査機「はやぶさ2」は来年末頃に帰還。2021年からは大学の研究者達によるチームが、はやぶさ2が持ち帰った試料を分析。
「探査機運用・観測に関わったメンバー達から、いよいよ自分達がバトンを引き継ぐ。緊張が高まるが、楽しみも大きい。降ってくる隕石からは、その母天体についての正確な情報は得られにくいが、宇宙探査によって、ターゲットとなる天体の場所や地質を化学組成と関連づけて研究できる。太陽系科学をさらに前進させるものになれば」
と目を輝かせていました✨
2019年4月から広島大学の教授に昇任し、教育と研究に一層励んでいます。
「研究の土台となるのは基礎力。それなくしてスケールの大きい研究は成り立たない。学生時代は基礎力を育む大切な時期」。自らの経験を踏まえ、学生にアドバイスする熱心な教授です。
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
学長インタビュー🎤~広島大学編~
大学受験を考えてる方も必見!?
学園都市・東広島市にある3大学のトップに、各大学の強みや、地域との関わりなどについて聞きました!
今回お話を聞いたのは
広島大学 越智 光夫(おち みつお)学長。
教育のあらゆる分野を網羅する全国屈指の学部があることです。さらに、大学院が設置され、学部を卒業後、さらに高度な専門性を獲得することができます。
2019年度から総合生命科学研究科と医系科学研究科の設置を皮切りに、 大学院再編を本格化 させています。現在、11ある大学院を5つ程度に統合、研究科間の垣根を低くすることで他の領域も学べるようにし、領域での力を高めていきます。
東広島キャンパスでは、宿泊施設や交流の場を備えた国際交流拠点を整備し、理系の世界的な研究拠点として強化を図ります。世界中からトップクラスの研究者や優れた留学生を招き入れるためにも、教育研究環境の充実は待ったなしです。
東広島キャンパスは広島大の中核となるキャンパス。東広島市にとって、広島大は学術・教育の一大拠点であるのみならず、雇用や消費などさまざまな波及効果をもたらす基幹的な存在であると思っています。
欧米では大学を拠点に都市が形成されています。東広島市も大学のシーズを生かしたITやライフサイエンスの企業が立地する米国・シリコンバレーのような元気な街になってほしいと考えています。
世界の大学ランキングでトップ100に入るという目標を掲げています。文科省の 「研究大学強化促進事業」と、「スーパーグローバル大学創成支援事業」トップ型に採択 されました。
この目標を達成するために、ランキングの指標となる留学生数、英語論文数、企業からの外部資金の割合など5項目で目標を立てています。道は平たんではありませんが、全学で一丸となって努力していきます。
他大学の学長インタビューもチェック!👇
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
【広島大学の若手研究者】半導体の新材料を探索
広島大学の若手研究者に着目し、その研究内容についてインタビューしました!🎤
今回お話を聞いたのは
先端物質科学研究科助教
富永依里子さん(とみなが よりこ)さんです!
実験装置の前で研究への思いを語る富永さん
研究の最終目的を常に見据えて半導体の新材料を探索❄
半導体は、現代の私たちの生活を支える重要な電子部品のほぼ全てに使われていると言っても過言ではありません。
その半導体には、高品質の素材が求められるため、さまざまな種類の半導体結晶を作製し、その可能性について研究を重ねています。
特に半導体に広く使われている「ガリウムヒ素」系の化合物について、学部生のときから取り組んできました。
追究してきたのは、光通信用の新しい半導体レーザ用材料・ガリウムヒ素ビスマスです。ビスマスは、原子半径が大きく、結晶にひずみを来すことから、多くの研究者はこの材料を敬遠してきました。
半導体の分野では、半導体基板を素地にして半導体結晶を作っていきます。
結晶を作る際には、半導体基板と、作りたい半導体の格子定数(原子が作る結晶構造の辺の長さ)がそろっているほど、高品質な結晶が作製できます。格子定数がそろっていないと、ひずみができて品質の悪い結晶になります。
このため、学生時代の所属研究室では、格子定数に原子半径の小さい窒素を加えることで、半導体基板と格子定数をそろえていました。しかし、窒素を結晶に加えると、結晶の発光強度が下がり、レーザ動作ができない欠点がありました。
私は発光に焦点を絞り、結晶にひずみが生じてもいいので、窒素を入れずに、ガリウムヒ素基板上に、ガリウムヒ素ビスマスの結晶を作製、レーザ動作させる実験を繰り返してきました。
ガリウムヒ素ビスマスの結晶品質が、他の半導体結晶と比較しても劣っておらず、工夫をすれば絶対にレーザ動作できると信じていたからです。実験を通して、レーザ動作が確認できたときの感動は忘れられません。
レーザ用新材料としての可能性が認められ、何よりうれしかったのは、国内外の先生方から学会で「面白い研究だ」と声を掛けていただいたことです。
当時は26歳。若かったことで、窒素を加えるものという固定観念にとらわれなかったことが功を奏したのだと思っています。
10歳のとき、「地球が1cm太陽に近くても遠くても、私たちは誕生していない」と書かれた本を読み、漠然と地球を守る仕事に就きたい、と思いました。
高校の物理の授業で、半導体や室温超伝導材料のことを知り、電子材料分野の研究者になれば、地球温暖化を防止する太陽光発電システムを作ることができるのだな、と思うようになりました☀
10歳のころに描いた夢がつながり、電気電子系の大学学部に進学、現在に至っています。
今の立ち位置は、研究を通して、学生に教育することも大切な仕事です。
研究者を目指す学生には、常にゴールを見据えて実験に邁進することを伝えたいですね。
研究には「生みの苦しみ」が伴います。明確なモチベーションとビジョンを持っていれば、「つらいな」という思いも乗り越えることができるからです。
広島大学に赴任して7年目を迎えます。これまでは、きれいな結晶を作ることに主眼を置いてきましたが、 現在は意図的に原子配列を乱すことに力点を置いて研究 に取り組んでいます。
テラヘルツ波という電磁波を発生させたり、検出したりするための素子用の半導体を結晶特性の観点から見た研究を行っています。テラヘルツ波は新しいセンシング技術などさまざまな分野への応用が期待されています。
究極の夢は、トランジスタやレーザ、結晶成長など半導体分野の世界的な研究者が集い、新しいものを生み出す世界規模の拠点を作ることです。
そのメッカが広島大学にできたら最高ですね✨
※プレスネット2018年5月31日号より掲載
若手研究者シリーズはコチラ