2020年4月30日
【広島大学の若手研究者】研究機関連携コロナウイルス制圧を
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院医系科学研究科(医)助教
小田 康祐 さん
専門はウイルス学。立体構造を解析、ウイルスの本質に迫る
ウイルスの種類の一つであるパラミクソウイルスは、麻疹ウイルスやヒトパラインフルエンザウイルス(風邪の原因)、流行性耳下腺炎ウイルス(おたふく風邪の原因)、ニパウイルス(ヒトに感染する致死率の高いウイルス)など、人や動物に感染して感染症(病原性)をもたらす重要なウイルスが数多く含まれています。
現在のところ、ワクチン接種が有効なパラミクソウイルスは麻疹ウイルスや流行性耳下腺炎ウイルスに限られ、他のパラミクソウイルスに対して効果をもたらす薬はいまだなく、治療薬の開発が望まれています。
パラミクソウイルスは、高い病原性を発揮するのに必須となるアクセサリータンパク質と呼ばれるウイルスタンパク質を生み出します。
タンパク質は三次元の状態で機能を持っており、多くの複雑な機能を持つアクセサリータンパク質に関する理解は、まだ十分に進んでいません。
私はアクセサリータンパク質を標的にした治療薬の開発を目指し、このタンパク質の立体構造の解析をもとにしながら、病原性の解明について研究を行っています。
アクセサリータンパク質の立体構造を世界で初めて明らかにでき、その成果としてアクセサリータンパク質が感染細胞内で、どのように機能するのか、詳細に解明することができました。
ウイルス学会で研究成果を発表する小田さん
平たく説明すると、通常はウイルスが人に感染すると、自然免疫が働いてウイルスを排除しようとします。しかし、アクセサリータンパク質は自然免疫を抑制するように働いて感染を成立させ、人の細胞から外に出ることを促進させており、そのメカニズムを解明しました。
また、アクセサリータンパク質の立体構造をもとにして、抗ウイルス薬を設計できる可能性も見出しました。ワクチンの開発が困難なパラミクソウイルスの治療薬や予防薬を開発し、医学や社会に貢献することが夢です。
研究では仮説を立てて実験で証明していきます。予想外の実験データが得られることがあり、解釈が困難な場合もあります。専門分野以外のことに取り組む必要性も生じてきます。
ウイルス学会の様子
ただ、そのようなデータが得られると研究に深みが増し、詳細なメカニズムの解明につながります。研究をより面白くするためには、実験データの小さな変化を見逃さないことが大切です。
まだまだ分からないことが多いウイルスですが、日本の多くの研究機関は連携を取りながら、このウイルスを制圧するために緊急に研究を進めています。
広島大では、その中でできることを探し役割を全うすることを目指しています。
※プレスネット2020年4月30日号より掲載
過去の「広島大学の若手研究者」はコチラ
2020年2月27日
【広島大学の若手研究者】新しい教育の形を提示していきたい
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大森戸国際高等教育学院 特任助教
サリー・チャン さん
専門は留学生の日本語教育。ペアワークが日本語の習得を促進
私は香港出身のオーストラリア育ち。幼い頃、香港では日本のアニメがはやっていて日本語に興味を持ちました。本格的に日本語の勉強を始めたのは中学生から。オーストラリアの中学校では、日本語が必修科目だったことがきっかけになりました。
日本語の勉強を始めてみると、私の母語は中国語だから、漢字は理解できましたが、それ以外のことは本当に難しくて(笑)。
日本語を学習する外国人が、第二言語(日本語)の習得を促進できるような環境を作っていけたらなと思ったのが研究に取り組む出発点になりました。
研究のキーワードになっている言葉です。外国語である第二言語を学習する人は、母語の影響を受けてしまい、学習中の第二言語に不自然さ、つまり負の言語転移が生じてしまいます。
例えば母語が日本語だと、英語のrとlの発音に不自然さが残ります。私は第二言語である日本語を習得する留学生が、どうような学習をすれば誤用をしないですむのか。文化的、環境的な側面から研究を進めてきました。
言語能力が似た者同士がペアワーク、グループワークで学習すると、言語習得が促進されることが分かってきました。
そのためには、従来の日本の典型的な教室のスタイル、つまり教師の一方的な授業スタイルを改める必要があります。
学生同士がディスカッションをするような作業を増やすなど、留学生が主体的に活動できる授業が求められます。主体的な授業が誤用の気付きを促します。
教室だけでは学習の時間が限られます。日本語能力を向上させるためには、教室外でも教室で絆を深めたグループなどで積極的に日本語を使う環境をつくることが大切です。
留学生は教室では日本語を話しても、一歩外に出ると日本語を話さなくなります。日本語が飛び交う環境の中で、自分を安心させたいために自然に母語を話せる人と、母語で会話するようになります。日本語能力が同じレベルの人が集まることで安心感が生まれ、日本語を使う環境も芽生えます。
自分の研究を実践に展開できることですね。ペアワークやグループワークを通して、日本語能力が上達した留学生の姿を見ると、本当にうれしくなります。私の研究の活力の源にもなっています。
どうような工夫をすれば、先生の教育のモチベーションと留学生の学習意欲が高まるのか、ということに興味を持っています。
伝統的な日本の教育を行っている日本の先生に、新しい日本語教育の可能性や方向を提示していきたい、と思っています。
※プレスネット2020年2月27日号より掲載
過去の「広島大学の若手研究者」はコチラ
2019年10月24日
意外と知らない大学TOPICS
「大学は大学生だけが行く場所」なんて思っていませんか?
実は東広島の各大学では地域住民を対象にしたさまざまな取り組みを行っているそう…!
その一部をご紹介🙌
広島大学は、2019年度に「地域の元気応援プロジェクト」を実施していました。学生・教員・県内の地域団体の3者でチームを組み、地域活性化を目指す取り組みに、広島大が50万円を限度額に助成するという内容でした。
11件の応募があり、8件を採択しました。2020年2月まで活動に取り組み、3月に報告会を行ったそうです。
東広島市関連のプロジェクトは、志和町のものづくりスペース「つくれば工房」が、 統合生命科学研究科の彦坂暁准教授たちと連携。志和堀の古民家図書室ほたる荘と、併設する蔵を改修したものづくりスペースをハブとして、地域と大学を結び、世代を超えた学びの拠点をつくることを目指しています。
具体的には、IT/ⅠoT技術を実践的に学べる環境の整備や、子どもたちが遊んで学べるスペースづくり、サイエンス&テクノロジーワークショップの開催などに取り組んだそうです。
広島国際大学は、市民を対象にした「広国市民大学」を開講しており、「こども未来コース(応用編)」では、2019年度、30~50代の40人が入学。全12回の講座を通して、子どものやる気を育てるメカニズムや思春期に寄り添った上手な対応の仕方などを学んでいく。
2019年9月25日に行われた5回目の講座では「思春期の〝厄介さ〟は〝こころ〟の厄介さ」がテーマでした。広国市民大学の吉川眞学長が、実例を挙げながら、家族のあり方 や思春期の乗り越え方などについて話した。
3児の母親の西条町下三永の主婦は「毎回学ぶことが多く、子どもや夫に対する言葉掛けに気を付けるようになった。何より、自分の時間を活用できてリフレッシュしている」と笑顔だったそう。
広島国際大学が2019年2月に開設した「しあわせ健康センター」では、医師や理学療法士、言語聴覚士などの専門の資格を持つ27人の教員が、介護予防や認知症予防、子育て支援など、地域の人たちの健康に関する相談に無料で応じています。
利用者の80代女性は「自立した生活を長く続けて、いつまでも在宅で過ごせるように」と週1回のペースでセンターに通っています。
総合リハビリテーション学部の木藤伸宏教授は
「相談者に合わせたトレーニングを提案しています。初回にじっくりと時間をかけたカウ ンセリングを行い、相談者がどういった問題を抱えているのかをまず理解した上で、治療が必要かどうか、その場合何科を受診すべきなのか、などをアドバイスしています。痛みや筋力低下の背後には基礎的な疾患が潜んでいることも。まずは気軽に相談を」とのこと。
利用者は「親切で丁寧に指導してくださるので、安心して続けることができる」と笑顔でした😊
電話番号は同大総合リハビリテーション学部事務室0823(70)4851(平日9時~17時受付)。
大阪、奈良、和歌山、広島、福岡の1府4県にわたって6キャンパスある近畿大学。
「規模の大きな大学のため工学部が広島にあることを知らずに受験する生徒も多い」という悩みから、近大工学部は近大マグロがロボット化した「マグロボ」というキャラクターを作り、工学部が広島県にあることをアピールしています。
マグロボが登場する動画を作成し、2019年7月からテレビCMを放送したり、インターネットで公開しています。
現役の学生や、近大の附属高校生らが出演し、広島市のマツダスタジアムや東広島のキャンパスで撮影。本格的なCGを使っており、映画さながらの仕上がりです!🎥✨
他学部の生徒からも「インパクトが強い!」などと、好評でした。
マグロボを発進させるのは近大工学部の6学科のメンバー。ものづくりや技術者の格好良さを若者に伝えることもこの動画の狙いだそうです。
東広島市高屋うめの辺にある近畿大学工学部は、キャンパス内に宅配便の受け取りと発送ができるロッカーを設置しており、学生たちにも大好評!
「PUDO(プドー)ステーション」というロッカーで、B館渡り廊下に設置されています。ヤマト運輸の会員制サービス(無料)に登録すると、ここのロッカーを指定した発送や受け取りの手続きがパソコンやスマートフォンで簡単にできちゃいます📲
利用時間は8時~20時。
ロッカーを利用したことのある化学生命工学科の生徒は「対面せずに発送・受け取りできるのがとても便利」とのこと。
地域住民も利用することができ、担当者は「気軽に利用してください」と呼び掛けています。
地域住民が利用する場合は、
杵原中央の交差点から近大通りへ上がり、最初の四つ角を左折
↓
来客者駐車場の案内看板とおりに右折しゲートをくぐる
↓
コンビニ手前にある来客者駐車場へ駐車
駐車券は守衛室にて処理してもらえるので駐車料金もかかりません。
学生でなくても使える設備・講座があるんですね!✨
施設を利用される地域の方と交流できる機会に繋がるかもしれませんね。
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
広島大学キャンパスガイド
広島大学が行っている「キャンパスガイド」では、学生ボランティアが東広島キャンパス内を案内してくれます。
大学のすごさを知ったり、身近に感じられたりするツアーを紹介!学生の案内を動画で配信。
ガイドツアーを疑似体験してみよう!✊
予約なしで自由に参加できるガイドツアー。
広島大学の学生ボランティアが案内してくれます。その日の参加者の要望に応じてコースを設定。
毎週金曜日の13時~15時(約2時間)。法人本部棟2階に集合。問い合わせは広島大学地域連携部門へ。
電話:082-424-6134
※現在「新型コロナウイルス」感染拡大防止のため、キャンパスガイドを中止しています。
自然豊かな東広島キャンパスの南半分を一望できる。普段は施錠されており、一般の人はガイドツアーでしか入ることができない場所。
広島大学のキャンパスの面積は約250へクタール、東京ドームの53個分。国立大学の単一キャンパスでは全国3位の広さをほこります。
工学部には国内の大学の中では最大の規模を持つ試験水槽があります。CO2排出量の少ない船の開発に活用されている企業からのオファーも多いそうです。
実験に使う両生類を飼育。世界にはこのようなリソースセンターが4つあるのですが、その中でも複数を飼育するのは広島大だけ。
設置50年という歴史も世界一!
広島大学総合博物館の統一キャラクター「ヒロッグ」のモチーフもカエル🐸一般の人も自由に見学できます♪
開館は平日10時~17時。入場無料。
恐竜のフンにタッチ🦖✋
「環境と人間との共生」をテーマに、大学の紹介、宇宙・地球、里海、里山の4つのコーナーで構成。
触ってもいい化石など楽しい仕掛けが盛りだくさん。
開館は火~土曜日の10時~17時、入館無料。
2019年5月に誕生した中国産業とのコラボカフェ。キャンプをテーマにしたインテリアがおしゃれ。
コーヒー1杯200円とリーズナブル
ランチタイムには、地元のパン屋のサンドイッチなどが並び、自動車学校の案内、留学生の相談窓口もあります。一般の人も利用可能。
営業は平日の9時30分~17時30分(ラストオーダー17時)。
池と湿地、アカマツ林など大学移転前からの里山環境が維持され、貴重な動植物を観察できます。 メダカやカエルも生息。
この周辺の渓流と湿地、ぶどう池を含めて、自然を歩いて鑑賞・体験できる屋外ミュージアム「発見の小径」となっています。
自然の中を歩くのは気持ちいいですよ~
どうでしたか!? 身近にあるけどまだまだ知らないことが多いのではないでしょうか?
興味がわいた人は、ぜひ広大に行ってみてくださいね!!
※プレスネット 2019年10月24日号より掲載
\オススメ記事/
2019年10月24日
知らんかった!大学の『へぇ~』😮
東広島市は大学や研究機関が集積する学園都市。
みんなが意外と知らない〝大学のこと〟を大特集!
聞いて思わず『へぇ~』と言ってしまう大学のあれこれを紹介しちゃいます!🎓
🎓「企業人事担当者が見る大学イメージ調査」で、広島大学が「対人力」全国1位🙌
※日経HR、日本経済新聞社による調査
評価の基準は「コミュニケーション能力」や、「ストレス耐性があるか」など。
🎓広島大東広島キャンパスの敷地面積は東京ドーム53個分
広っっっっっっ!!😳
国立大学の単一キャンパスでは全国3位の広さだそう。 広すぎて迷いそうですね(笑)
🎓広島大総合博物館には恐竜のうんこの化石がある
※しかも、うんこの中に宝石がある
いや、色々と衝撃過ぎ!
めちゃくちゃ気になる… なんと実際に触れるそう!博物館は一般の人も自由に見学できるみたい。
🎓広島大が所有する「かなた望遠鏡」は全国有数の大きさ
なんと有効径(対物レンズ)は1.5m!人1人分の大きさ!
ここまで大きい望遠鏡は全国でも中々無い大きさだそう🔭
🎓近大工学部の受験生で、工学部が広島にあることを知らない人は意外と多い
実は大阪、奈良、和歌山、広島、福岡の1府4県にわたって6キャンパスある近畿大学。
意外と東広島に工学部があることを知らずに受験する生徒が多いよう…。
🎓近大工にはフードトラックが来る
不定期で構内にやってくる移動販売車(フードトラック)があるらしい…!
ホットサンド、焼き鳥、シュークリームなどを販売!
フードトラックは10時30分~15時に来るそう😋
🎓近大工は国家プロジェクトとして金属3Dプリンターの研究をしている
テレビでもたまに紹介されている3Dプリンター。
「シリコンなどを加工する」というのはよく聞きますが、金属を加工するってすごい!
🎓近大工は5人のプロ野球選手を輩出🏏
知らなかった!
佐々木修(近鉄バファローズ)1985年3月卒
佐野重樹(近鉄バファローズなど)1991年3月卒
中本和希(近鉄バファローズ)2004年3月卒
中元勇作(東京ヤクルトスワローズ)2011年3月卒
森原康平(東北楽天ゴールデンイーグルス)2014年3月卒
普段試合で活躍している選手が卒業生だったとは…!
🎓小惑星リュウグウの岩の分布を詳細に測定したのは近大工の教授
「NASAの何歩も先行く快挙」と世界中で称賛された「はやぶさ2」小惑星リュウグウへの着陸。
その着陸地点含む小惑星リュウグウの岩の分布を詳細に測定したのが 近畿大学工学部機械工学科 教授の
道上 達広(みちかみ たつひろ)教授!
🎓広国大に新しく完成した人工芝の陸上競技場は地域住民も借りることができる
「健康スポーツ学部」の実習で使用する陸上競技場を今年度に新設!
サッカーから陸上競技まで!コートがとてつもなく広くてすごい!
🎓広島国際大学の講堂の席数は、県内のホールの中でも最大級
なんと2150席も! 地域住民も利用できるようです。
🎓広国大の寮の定員数は全国7位
※定員は呉キャンパスとの合計
国際大学の寮室はなんと合計1,602室!(内、東広島キャンパス878室、呉キャンパス692室)
寮生活も充実していますね♪
🎓国家資格の義肢装具士の勉強ができる大学は西日本で広国大だけ
西日本ではここだけでしか学べないという技師装具士を目指す学生が集まって、日々切磋琢磨しているんですね!
思わず『へぇ~』と言ってしまうようなことばかり。いかがでしたか?
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
【広島大学の若手研究者】ニワトリの遺伝資源保存法を確立
広島大学の若手研究者に着目し、その研究内容についてインタビューしました!🎤
今回お話を聞いたのは
大学院生物圏科学研究科助教
中村隼明(なかむら よしあき)さんです!
始原生殖細胞に着目
ニワトリの遺伝資源保存法を確立🐓
研究テーマを一言で言えば「動物を細胞レベルで保存する研究」です。もっとかみ砕いて表現すると「現代版のノアの箱舟計画」といったところでしょうか。
ギリシャ神話の「ノアの箱舟計画」では、箱舟の中でさまざまな動物種の雄と雌のペアを冬眠させます。大洪水の後、眠りから覚めた動物は、交配して子孫を増やします。
僕の目指す「箱舟計画」では、液体窒素タンクの中で、次世代に遺伝情報を伝達することができる唯一の細胞である生殖細胞を冬眠させます。
ただ、生きた動物がいないので、交配によって子孫を増やすことができません。このため、凍結した生殖細胞を溶かして、その細胞から個体を復元する必要があります。
僕の研究は生殖細胞から、次世代の個体を復元する技術を開発し効率化することです。
小学生のとき、大干ばつの影響で、僕の住んでいた地域からベッコウトンボが姿を消しました。そういう生き物を、人間の手を介して保護していきたい、と思ったのが、動物の種の保存に興味を抱くきっかけになりました。
哺乳類の発生工学分野では、18世紀に人為的に精液を生殖器に注入する人工授精の技術が生み出され、戦後は精液の凍結保存技術が実現しました。
このことが、家畜生産の現場に人工授精の普及をもたらし、今では乳牛の99%、肉牛の95%が人工授精によって生産されています。
しかし、鳥類は哺乳類ほど種を保存する技術が十分ではありません。鳥類の卵は大き過ぎて、凍結することができないことがネックになっているからです。
研究で着目したのは、ニワトリとウズラをモデルにした始原生殖細胞です。
始原生殖細胞とは、胚(鳥類では卵の中の時期)が発生する過程で出現する精子や卵の起源細胞のことです。
その始原生殖細胞は、将来の生殖層(オスであれば精巣、メスであれば卵巣)に移動する過程で、一過的に血液中を循環することが知られていました。
この性質を利用して、血液中や生殖巣から取り出した始原生殖細胞(ドナー)を、他のニワトリの胚(宿主)の血液中に移植する技術が開発されました。
ドナー始原生殖細胞は、宿主胚が持つ能力によって、生殖巣へ移動して生着し、機能的な精子や卵になります。ただ、これまでの技術の限界として、始原生殖細胞の操作の根幹となる採取や凍結、移植の効率が極めて低いことが課題でした。
そこで、これらの課題を一つずつ解決することで、始原生殖細胞を凍結して、ニワトリやウズラを半永久的に保存する技術を確立しました。
特に、宿主胚自身が持つ始原生殖細胞を除去して、ドナー始原生殖細胞由来の精子や卵だけを作らせる技術は、凍結した始原生殖細胞からニワトリを効率的に復元することができるため、世界から注目されています。
遺伝資源は、一度損失した場合、再び取り戻すことができません。このため、現存する動物から積極的に遺伝資源を収集・凍結保存することは急務です。
日本鶏などの希少な品種は、年間産卵数が少ないため、得られる受精卵の数が制限されますから、まさに保存は必須です。
家畜化された鳥の遺伝資源の保存は、鳥インフルエンザの脅威に対抗するためにも、大切な意味合いを持ちます。
将来的には、繁殖能力の高いニワトリに、絶滅危惧種のライチョウを生ませてみたい、と思っています。どちらもキジの仲間。できないことはないと思っています。
※プレスネット2018年4月5日号より掲載
今までの若手研究者はコチラ
2019年10月24日
大学のあの人って実は凄い!?空手界の期待のエース
皆さんが通っている大学のあの先生・あの人が実は全国や世界で活躍しているって知っていましたか?
近畿大学工学部の崎山優成(さきやま ゆうせい)さんにインタビューしました!
中学生から全日本強化選手 世界でV
男子組手75㌔級で五輪選考用ランキングは日本人の中で2位、世界ランキングは13位。中学3年生の時から全日本空手道連盟の強化選手に選ばれています。
年間3分の1が、フランスなど10カ国での海外遠征、月1回は東京や大阪での合宿というスケジュールをこなし、期待のエースとして鍛練を続けています。
2018年9月のKARATE1プレミアリーグ・ベルリン大会では、男子組手75㌔級で優勝。 プレミアリーグ3回目の挑戦で快挙を成し遂げました。
プレミアリーグは、世界ランキング50位までしか出場できない大会で、世界選手権に次ぐグレード。
「決勝で戦った選手が、空手界のレジェンドといわれている選手だったので、大変自信になった」
と振り返ります。
高校の空手部の監督で、道場の館長を務める父親・幸一氏の影響で5歳から空手を始め、厳しい練習を積み重ねてきました。
「東京五輪への道を諦めずに頑張っていきたい」
と力を込めます。
5歳から空手を始め、小学1年生から全国大会に出場しましたが、望む結果が出始めたのは、中学2年生の時。
ひたむきに練習を積み重ね、スランプを乗り越え、輝かしい成績を刻んでいきました。
高松中央高校空手部の監督で、剛柔流空手道日新館館長の父親の影響で、5歳から空手を始めました。弟と妹2人も空手をする空手一家。
小さい頃から、道場の練習だけではなく、空手部の高校生と一緒に練習を続けてきました。
「体格のいい高校生に慣れていたから、同級生とは恐怖心なく戦えて、ためになった」
と振り返ります。
結果が出始めたのが中学2年生の時 。それまでは、道場内の練習や高校生との練習だけをしていて、望む結果につながりませんでした。自分に足りない部分について見つめなおし、自分と向き合いました。
出した答えは、普段の練習に加えて、自分の足りない部分を強化する練習を取り入れ、ひたむきに練習を積み重ねること。その結果、中学2年の春の選抜大会で2位という結果を残すことができました。
一番のスランプは、高校1年の春の選抜大会の時でした。1日10時間に及ぶ厳しい練習を積み重ねていたのに、選抜大会の結果はベスト8。
「これだけ頑張ったのに」と肩を落としました。
しかし、そこで気持ちを切り替えて、奮起。小さい頃からずっと指導を受けていた父親にアドバイスをもらいながら、課題克服のために鍛練。
「高校に入学するときに日本一になって、父を胴上げすることを目標にやってきたので、チームの仲間と励ましあいながら頑張ってきたことが支えとなった」
その思いを胸に練習を積み重ねた結果、高校3年生でインターハイの個人と団体で優勝という快挙を成し遂げました。
近畿大学工学部の空手道部は強豪校。空手道部の監督は父親の大学時代の先輩。
「近畿大学工学部の空手道部に入って、日本一をとろうと決めていた」ときっぱり。
崎山選手の挑戦は続きます。
【2020年12月14日追記】
2020年12月13日。日本武道館で行われた
「第48回全日本空手道選手権大会(天皇盃・皇后盃)」
男子個人組手で初優勝🎊
おめでとうございます!
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
※プロフィール・写真は取材時の物です。
\オススメ記事/
2019年10月24日
大学のあの人って実は凄い!?楽しく学べるアプリの開発者
皆さんが通っている大学のあの先生・あの人が実は全国や世界で活躍しているって知っていましたか!?
広島大学 学長特任補佐 北村拓也さん
にインタビューしました!
大学3年生だった2013年に、小説家になりたい人を支援する電子書籍の出版会社を設立して学生起業家に。
翌年には 「ゲームにはまる熱量を学習に変えたい」 とゲーム要素を取り入れた学習アプリの開発会社を設立。
代表アプリ「猫と学ぶ将棋の定跡シリーズ」が2015年、GooglePlayで累計3万ダウンロードを達成し、新着有料ゲームランキング4位、有料ゲームランキング32位に輝いた🎮
2017年には、小・中・高生向けのプログラミングスクール「テックチャンス!」を開講。
現在全国16校で150人以上が学んでいるんです!ビジネスコンテストやプログラミングコンテストにも数々出場し、これまでに40件以上の受賞歴を持つそうです!
2019年2月には、第15回キャンパスベンチャーグランプリの全国大会に出場。セキュリティーの基礎を楽しく学べる「Cyshipサイバーセキュリティーの体験学習アプリ」で経済産業大臣賞、ビジネス大賞などを受賞しました。
学習工学の観点から、遊びながら楽しく学べるアプリの開発に力を入れています。
「洗脳的教育からの解放」 を人生のテーマに「誰もが自分の人生目標を持って生きられる世界」を目指しています。
現在、学生時代に立ち上げた会社を含む5社で代表取締役や最高技術責任者などを務める北村さん。
中学時代は、ネットのオンラインゲームにはまって不登校でした。学校へ行ったり行かなかったりの生活に周りからは「落ちこぼれ」と呼ばれていました。
大学進学後、1年生の授業でプログラミングに出合い、その面白さに引き込まれました。
「スマホもパソコンも自動車も、ロケットの発射まで、プログラミングされていると知って感動した。
その後、独学で技術を磨いて作ったアプリが評価され、僕にとってプログラミングが自己実現のための最強のツールになった。
あの頃の僕と同じように、生きづらさを感じている子どもたちに自己表現の楽しさを知ってもらいたい」
とプログラミングスクールを開校しました。
大学院では学習工学の第一人者、同大大学院工学研究科学習工学研究室の平嶋宗教授に師事し、工学の分野から人が学習する仕組みを探りました。
「ITの力で教育を変えよう」と、大学の研究で得た知見なども活用して、遊びながら楽しく学べる学習アプリを40件以上開発しました。
「主張」「根拠」「理由付け」の三大論法の考え方に着目して開発した、論理的思考力を育成するソフトは、2017年の人工知能学会で優秀賞を受賞しました。
北村さんは、2019年9月に博士課程を修了しました。大学にはやはり、行ったり行かなかったりの生活だったというが「落ちこぼれ」ではない。
実力主義の研究の世界で、審査のある国際学会への出席や論文の執筆を精力的にこなし、2年課程の修士を1年半、3年課程の博士を2年で終えました。
「僕はただ社会不適合者なだけ。幸い僕の分野はパソコンさえあればどこでも研究ができたので、好きなところで好きなことをやっていた」
と笑っていました。
中学時代の不登校の経験から、教育への課題意識は人一倍強い。「洗脳的教育からの解放」を人生のテーマに、これからは「誰もが自分の人生目標を持って生きられる世界」の実現を目指します。
学校の先生や親が決めた目標ではなく、自分で決めた目標を生きた方が最高の人生になるとの思いから、既存の学校教育からはみ出した子どもたちの支援をする「財団」や「学校」を作りたいと考えています。
「まだ“ロマンとそろばん”の“そろばん”の方が全然できていない。5年以内には実現させたいけれど」
と冗談を交えながら目を輝かせていました✨
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
大学のあの人って凄い!?ウィメンズヘルス理学療法の第一人者
皆さんが通っている大学のあの先生・あの人が実は全国や世界で活躍しているって知っていましたか!?
広島国際大学講師の平元奈津子さんにインタビューしました!
妊産婦の腰痛と姿勢との関係に着目
臨床の理学療法士を経て、2006年に助手として着任しました。
自身の妊娠・出産の経験から、妊産婦の体の不調に興味を持つようになり、妊産婦にみられる腰痛、骨盤痛などの症状と姿勢との関係に着目。
近隣の婦人科クリニックの協力を得ながら「ウィメンズヘルス理学療法」の研究に取り組むようになりました。
日本では周知されない同分野の研究推進を図るため、2012年にウィメンズヘルス理学療法研究会を発足。研究者と共に、2014年に同研究分野で日本初となる書籍を出版しました。
「日本における診療ガイドラインを作ることや、研究を積み重ねること、後進を育てることが私の使命」
と話し、2015年から日本理学療法士協会「ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法部門」の運営幹事として、学術活動の推進や研究会の運営に力を注ぎます。
2019年5月、ウィメンズヘルス理学療法の国際会議で、同部門の世界グループへの加盟が認可されました。
産後ママを対象とした講座で講師を務め、抱っこひもの正しい使い方や授乳のときの姿勢の注意点などを分かりやすく紹介。ウィメンズヘルス理学療法を指導できる教員として、後進の教育にも力を入れました。
2016年度から「産後ママのリフレッシュ講座」(東広島市こども家庭課主催)で講師を務め、産後の母親を対象に抱っこひもの正しい使い方や授乳のときの姿勢の注意点などを、理学療法の観点から分かりやすく紹介しています。
「妊娠期間に腰が痛くなって、産んだら治るのかなと思っていたけれど、産んでも治らない。産後だから仕方ないのかなと、そのままにすることで不調が長期化することも」
と警鐘を鳴らす。
産後に腰や肩などの痛みを訴える母親も多い、という。
講座ではそれらの症状を改善させる運動も交えながら、妊産婦の体の不調に理学療法を取り入れることの重要性を啓発しています。
母親たちからの支持も厚く、2015年度のプレ講座から昨年度までに計20回開催。2019年度は10回の講座開催。
「海外では妊産婦を対象とした研究や臨床が盛んに行われているが、日本ではまだまだ数が少ないのが現状。 1人でも多くのお母さんたちが楽しくて、体もつらくない出産や育児ができるよう に、地道な研究を積み重ねていきたい」
と話しています。
また、中四国エリアの大学で唯一ウィメンズヘルス理学療法を指導できる教員として、学生の指導にも力を入れる。
「日本では理学療法士にも、ウィメンズヘルス理学療法という分野があることを知らない人もいる。将来、一般の整形外科や介護老人保健施設などに勤める理学療法士が女性のトラブルを見たときに、当たり前にスッと対応できるようになれば。そのためにも、臨床に勤めている人たちと協力しながら研究を積み重ね、後進を育てていくことが必要」
と力を込めた。
※プレスネット2019年10月24日号より掲載
2019年10月24日
大学のあの人って実は凄い!?日本で唯一のドイツ義肢装具マイスター
皆さんが通っている大学のあの先生・あの人が実は全国や世界で活躍しているって知っていましたか!?
広島国際大学 教授 月城慶一(つきしろ けいいち)さんにインタビューしました!
東京パラリンピックでリーダー的役割
パラリンピックでは、義足や車椅子を修理する義肢装具士などの技術者が常駐し、選手を支えます。その技術者の一人が月城慶一さん。
1998年の長野パラリンピックから6大会連続参加しており、 世界から集まるプロの技術者の中でも中心的な存在 です。
義肢装具のベルトやパーツの調整・交換、車椅子のホイールのゆがみ直しなどあらゆる修理に対応し、リオパラリンピックでは約100人のスタッフで、約2400件の修理に当たりました。
日本で唯一、ドイツ義肢装具マイスターの資格を持ち、来年の東京でも経験豊富なスタッフとして、リーダー的な役割を担っています。
「選手が日本に来て良かったと満足してもらえるように、修理だけでなく、コミュニケーションも大切にしたい」
と思いをはせました。
現在、「コンピューター制御に頼らない普及型高機能膝継手の開発」に取り組まれています。日本人の体形に合い、安全に軽やかに歩け、安価な義足を研究。
試作品を作るたびに出てくる課題にも、妥協することなく、挑戦を続けられています。
中古義肢を再生し、無償でルワンダとインドネシアに提供する学生主体の活動を支えます。思いの詰まった中古義肢が適切に活用されているか、 現地に視察に行き、患者の元に確実に義肢が届くよう 道筋をつくられています。
「コンピューター制御に頼らない普及型高機能膝継手」の開発に着手するきっかけは、月城教授が世界大手の義足パーツメーカー、ドイツのオットーボック社に勤務していた1998年頃、出張先の日本でコンピューター内蔵の義足が売れていたこと。
コンピューター内蔵の膝だから、軽くて、動きやすい。オットーボック社は、欧米人向けの商品を販売しているので、日本人の足でも軽く動かすことができて、一部の富裕層だけでなく、多くの人が購入できる安価な商品が必要だと考え、コンピューターを内蔵していない膝継手の試作品を同社研究開発部に依頼し、試行錯誤を重ねました。
1999年、同社の日本支社立ち上げメンバーとして帰国後も研究を続け、2005年遂に製品化されました。
2013年頃からは、企業と共同で、さらに進化した膝継手を開発しています。
製品化した膝継手は、足を軽やかに動かすことに優れていましたが、足で体重を支えることにも長けたものを研究。
勤務経験があるドイツの義肢装具製作会社で身に付けた技術と、工学院大学機械工学部で学んだ知識が糧となり、試作品を作っている過程で新たな課題ができても、諦めずに挑戦し続けています。
「商品化に取り組めていることが幸せ」
と晴れやかな笑みを浮かべました。
義肢装具学を学ぶ学生が主体となり、15年に「義肢パーツ再生プロジェクト」を設立。
使われなくなった中古義肢を譲り受けた後、分解して磨き、使える部品をルワンダとインドネシアに無償で提供しています。
発展途上国で義肢を購入できるのは、ごく一部。今まで義肢を購入できなかった人たちに、中古義肢を活用し、義足などを届けます。
現在、視察やインドネシアに中古義肢を郵送する費用は、月城教授が自己負担しているそうです。「待っている人がたくさんいる」と目を細め「ずっと続けたい」と力を込められていました。
※プレスネット2019年10月24日号より掲載