

2026年1月27日
【広島大学の若手研究者】見えない細菌の行動を解き明かす
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院統合生命科学研究科助教
緋田 安希子さん

専門は応用微生物学の研究
■研究者を目指すきっかけ
研究者を目指した明確な動機はなかった。大学4年時、「なんとなく面白そう」と選んだ研究室で、誰も希望しなかった地味な卒業研究に没頭。試行錯誤の末、努力が結果につながる研究の面白さを知り、大学院に進学し研究者の道へ進んだ。
■専門は
専門は、応用微生物学で、細菌が環境を感じて移動する「走化性」を研究している。べん毛で泳ぎ(図1)、好ましい物質に近づき嫌な物質から離れる仕組みを、複数のセンサーの働きから解き明かしている。

■研究と成果
主な研究対象は、トマトなどを枯らす植物病原菌「青枯病菌」だ。成果は3つある。基礎研究から防除への応用につながる道筋を示した。第一に、青枯病菌が持つ22種類の走化性センサーについて、遺伝子を一つずつ壊して解析し、約半数の機能を明らかにした点。第二に、植物の根から分泌されるリンゴ酸を感知して菌が集まり、感染が成立する仕組みを解明した点。第三に、その性質を利用し、リンゴ酸を周囲に散布することで感染を抑えられる可能性を、実験室レベルで示したことだ。
■研究のやりがい
世界中の誰も知らない現象を、自分の手で一つずつ明らかにしていく過程が何より面白い、という。未知のセンサーが思いもよらない物質を感知し、その理由を探る中で、細菌の戦略的な行動が見えてきた瞬間は大きな喜びを感じる。「どうなんだろう」と考え続けることが、そのまま仕事になっていることに研究の魅力があると語る。

■今後の研究目標
今後は、防除への応用も視野に入れつつ、残る未知のセンサーを解き明かすことを目指している。まずは細菌の行動原理を明らかにし、その先に防除につながる可能性を探りたいとしている。
■学生へ
計画通りに進む道だけが正解ではない。将来を考えることは大切だが、目の前で「楽しい」「面白そう」と感じる気持ちを大事にする選び方もある。考えすぎず進めば、自分に合う道が見えてくることもあるかもしれない、という。
(山北)
2022年6月30日
【広島大学の若手研究者】鳥類で生殖システムや遺伝子改変を考察
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学 大学院統合生命科学研究科 助教
松崎 芽衣 さん

鳥類で生殖システムや遺伝子改変を考察
人の不妊治療や医薬品開発に役立てたい
学生時代から鳥類の生殖システムの分子メカニズムを研究しています。きっかけになったのは、ウズラの精子を顕微鏡で見たとき。ちょうどオタマジャクシが頭と尻尾を動かして泳いでいるイメージで、とても神秘的でした。その精子の動きと美しさに魅了され、生殖システムの研究に取り組むようになりました。

培養試験中の始原生殖細胞を顕微鏡で観察
鳥類は、交尾後の精子を貯蔵できる「精子貯蔵管」を持っていて、一度交尾をすれば、その後交尾をしなくても貯蔵精子を使って、受精卵を産み続けることが可能です。ニワトリであれば、約3週間、精子を貯蔵できます。精子貯蔵管では乳酸がつくられていて、貯蔵された精子は乳酸の働きで休眠状態となっていることを、博士課程の研究で突き止めました。

精子貯蔵管の顕微鏡写真
では、精子はどうようにして精子貯蔵管に入るのか。ウズラの精子を 使い、精子が貯蔵管に入る仕組みについて調べた結果、ウズラの精子表面に存在する糖鎖が精子貯蔵管への侵入に大きな役割を果たしていることを明らかにしました。
一方、射精された精子が貯蔵管に入る割合は1%未満に過ぎません。どんな精子がメスに選ばれるのか、という研究も行っています。精子は一つ一つで長さが違いますが、精子貯蔵管には長い精子が多く貯蔵されていることが分かってきました。そのことが、子孫を多く残すための戦略なのか。そして、メスに好まれる精子がどのように作られるか、明らかにしていきたいと思っています。
生殖システムと並行して、取り組んでいるのが遺伝子改変技術の研究です。哺乳類では、ゲノム編集が普及してから、より簡単に遺伝子を書き換えることができるようになりました。一方で、鳥類では細胞分裂を始める前の受精卵を腹から取り出すのが難しく、卵自体も巨大で操作が しづらいことから、遺伝子改変が難しいのが実情です。そこで、鳥類では、将来生殖細胞となる「始原生殖細胞」を発生途中の胚から採取し、始原生殖細胞へ遺伝子改変した後に、別の胚に細胞を移植して改変個体をつくる方法が考えだされました。
ただ、この方法は、ニワトリ以外の鳥類では、始原生殖細胞の培養が難しいのが欠点。このため、鳥類の産卵直後の受精卵へ直接ゲノム編集ツールを導入し、効率的に遺伝子を書き換えた鳥類を作る研究に取り組んでいます。
鳥類はユニークで面白い生殖のシステムを持っています。遺伝子改変と合わせ、一つ一つを解き明かしながら、人の不妊治療や、医薬品・食品産業の応用に役立てられれば、と思っています。シンプルに「知りたい」という思いを大切にしながら、チャレンジ精神を持って研究に向き合っていきます。
※プレスネット2022年6月30日号より掲載
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