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【広島大学の若手研究者】民族スポーツの担い手の実践を調査 スポーツをすることはルーツを育む文化

2021年9月25日

【広島大学の若手研究者】民族スポーツの担い手の実践を調査 スポーツをすることはルーツを育む文化

プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤

今回お話を聞いたのは
大学院人間社会科学研究科 准教授
小木曽 航平 さん

小木曽さん

スポーツという「生の形式」

■きっかけ

 中学校からスポーツの試合を見ることが好きで、高校ではサッカー観戦に夢中になりました。ちょうど日本が初めてワールドカップに出場し、日本の選手が海外で活躍をする時期。そんな彼らのカッコいい生きざまに興味を抱きました。
 一方、世界には珍しい民族スポーツがたくさんあり、興じる人たちは、プロスポーツ選手のように、有名にもなれないし、お金を稼ぐことができないのに真剣に取り組んでいます。こうした人たちに対して、スポーツや遊びなのに、「なぜ、そこまで?」と感じた思いが研究に取り組むきっかけになりました。

小木曽さん
オアハカ市のペロタ・ミシュテカのチームの皆さんと一緒に

■研究内容

 メキシコの「ぺロタ・ミシュテカ」や、タイの「ロングボートレース」などの、伝統的な民族スポーツの調査を続けています。ぺロタ・ミシュテカは、メキシコ・オアハカ州の先住民の間で伝わってきた、硬いボールをグローブで打ち合うテニスに似たスポーツ。タイのボートレースは、運ぶのにも作るのにも手間がかかる全長24mの伝統木造舟を使います。民族スポーツの担い手たちの実践を研究することで、人が生きることと、スポーツをすることの間には、どんな文化的な意味があるのか問い続けています。

■見えてきたこと

 オアハカ州には代表的な産業が乏しく、出稼ぎ者を多く輩出しています。彼らは、出稼ぎ先や、移民となり国境を越えた移住先でも、日本の草野球のような感覚で、コートをつくり、ぺロタ・ミシュテカを楽しんでいます。オアハカの人たちにとっては、ぺロタ・ミシュテカは、自分たちの故郷への結び付きを感じたり、先住民としてのアイデンティティを守っていったりする、いわばルーツを育んでいく文化であることが分かってきました。
 ロングボートレースは、仏教国であるタイの寺院と結び付いているスポーツで、民族スポーツがタイの文 化形成の一翼を担っていることが考察できました。

小木曽さん
調査の合間にオアハカ料理を楽しむ

■これから

 広島の伝統的スポーツの櫂伝馬(かいでんま)競漕を調査しています。櫂伝馬は海をフィールドにしますが、漁業権などの兼ね合いで、自由に海を使うことができません。日本のスポーツ政策は、競技スポーツや健康づくりなどには、予算が投じられますが、伝統スポーツ・遊戯にはほとんど予算が付きません。伝統スポーツの担い手たちは、遊ぶ権利が保障されていないのが現実です。彼らの遊ぶ権利を、どう保障できるか。研究を通して考察していきたい、と思っています。そのことが伝統の継承につながるからです。

■心掛けていること

 楽しむことですね。難しい資料を作るときにも、どうすれば面白い資料になるだろう、と考えながら取り組んでいます。苦になることであっても、楽しんでやれば意外と何ともなかったりします。楽しむことは僕の生きる原動力になっています。

 

PROFILE 1983年生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程修了。博士(スポーツ科学)。専門はスポーツ人類学・スポーツ社会学。2019年3月から現職。

※プレスネット2021年9月30日号より掲載

 

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