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就職に強い大学―。2019年学部創設60年を迎えた工学部(東広島市高屋うめの辺)の大きな武器。
建学精神の「実学教育」と「人格の陶冶(とうや)」にのっとったカリキュラムで社会に役立つ人材を育成しています。
民間企業を希望する学生の就職内定率 99.5%。
大学院進学を含めた進路決定率 95.4%。
昨年度の工学部卒業生の就職実績だ。どちらの数字も全国の理系大学でトップクラス。特筆すべきことは、内定者の約7割を上場企業や資本金1億円以上の優良企業が占めていることだ。
この数字をはじき出している要因の一つが、きめの細かいキャリアプランだ。4月に入学した1年生は、就職ガイダンスから大学生活をスタートさせる。学生たちは、10年後の立ち位置や夢をしっかりと描きながら、4年間を過ごしていく。
毎年2月に3日間をかけて行う、学生の業界研究の場となる学内合同業界研究会には、国内大手の上場企業から地元優良企業まで約350社が集う。
工学部卒業生が出席する企業も多く、学生たちは、実社会で活躍する先輩と直接話をすることで就職へのモチベーションを高めていく。
4年間の実学教育も就職を力強くサポートする。通常は、1、2年生で一般教養を、2年生後半から専門領域をそれぞれ学んでいくのが大学の一般的な姿だが、近畿大工学部では1年生から、実学の基となる実験を組み込む。実験の割合は他の理系大学と比べると高い。
さらに実験の結果をレポートにまとめることで、就職活動に必要な文の書き方や自己表現力も養う。一石二鳥の取り組みだ。
講義では、学んでいる分野が実社会でどう生かされているかを、確認しながら展開。第一線で活躍する工学のプロを招いた講演も盛んに行う。就職指導委員長の竹田史章教授は「学生の就職や職種へのイメージが膨らむよう、遠くに見えている目標を近くに引き寄せるよう工夫している」と話す。
JABEE(日本技術者教育認定機構)が認定する教育プログラムの取り組みを推進しているのも特長だ。
※写真はイメージ
企業の活動でいうPDCAサイクルのことで、常に時代に即応した教育が施されるよう、継続的に授業改善を行っている。「大学で学んだ知識が、企業で発揮できてこその実学教育」(竹田教授)との理由からだ。
その思いは学科の再編にも表れる。1959年、2学科でスタートした工学部は、時代を見据えながら幾度となく改編を繰り返してきた。現在は化学生命工学、電子情報工学など6学科13コース体制を整え、テクノロジー分野の大半を網羅している、という。
一方で、企業からの求人数は昨年度実績で1万4353社(求人倍率30・2倍)に上る。この高い数字の背景には、《打たれ強い》工学部学生の気質が起因しているという。学生は1年生から失敗がつきものの実験やレポート提出を繰り返し、忍耐力を培う。
打たれ強いことは、企業の求める人物像と一致し、就職した卒業生の頑張りが、さらに求人数を押し上げる好循環になっている、という。
昨年度の学生の就職満足度は92%。一人一人の学生へのきめの細かい就職支援がこの数字を導き出す。
竹田教授は「学生には、本学の就職力と自分を信じて、少し背伸びした会社を目指して」とアドバイスする。
竹田教授
工学部の研究者と企業や行政をつなぎ、産学官連携の研究拠点になっているのが、工学部内にある次世代基盤技術研究所(所長・栗田耕一)だ。先端ロボットや3D造形技術など次世代に欠かせない基盤技術の研究を行い、地域産業の発展に貢献していくことを目指す。
次世代基盤技術研究所の前身は、1996年に設立された工業技術研究所。
研究分野を深化させるために改組し、2010年、文科省の「戦略的研究基盤形成支援事業」の研究用施設として整備した。産学官連携のワンストップ窓口となる社会連携センターと、7つの研究センターから構築されている。スタッフは41人で、そのほとんどを工学部の研究者が兼務している。
社会連携センターは、2002年に設立された「工学部産学官連携推進協力会」の活動などを通して、地域の産業界との共同研究や受託研究などの窓口を担い、イノベーション創出につながるネットワークの構築を図る。
この7年間で民間企業から受託して行った研究は170件に上る。同協力会は、大学と地域・企業連携の先駆けの存在だ。
2018年11月現在の会員数は法人、個人含め176で、毎年、研究公開フォーラムなどを行い、工学部研究者と会員企業の交流も図っている。
研究センターには、次世代モビリティに関する革新的技術を探求する自動車技術研究センターや、住宅の省エネ技術と耐震技術を研究する建築環境センターなどがある。
自動車技術研究センター内にあるドライビング・シミュレータ
今年はモノとインターネットを接続して新しい価値を創造するIoT技術を探求する知能計測工学研究センターを設置した。研究センターの研究には、研究所に所属するスタッフの研究室の学生も携わる。2018年11月現在、129人の学生が登録し、学んだことを実社会に還元できるよう、研究に励んでいる。
東広島市では、今年度から大学と連携した新産業の創出などに力を入れる。
栗田耕一所長は「工学部では、いち早く地域に根差した研究を推進してきた自負がある。次世代基盤技術研究所を通して、東広島市との連携はこれまで以上に深化させていきたい」と話している。
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プレスネット2018年11月22日号より掲載
投稿者名: プレスネット