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CAMPUS
津野地直さん

【広島大学の若手研究者】自動車排ガス浄化に有効なゼオライト材料開発 カーボンリサイクルの省エネルギー化追究

2021.12.20

プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤

今回お話を聞いたのは
大学院先進理工系科学研究科 助教
津野地 直 さん

津野地直さん

研究キーワードはゼオライト・二酸化炭素の回収と利用

■触媒

 僕は触媒を扱っている研究者です。触媒は、特定の化学反応の反応速度を速めますが、自身はなくならない物質のことです。例えば、家の壁に塗ってある光触媒は、付着した汚れを分解することができますが、光触媒自体は分解せず壁をきれいに保ち続けることができます。

■ゼオライト

 研究テーマにしている無機材料です。ゼオライトは独自の触媒・吸着特性を持ち、幅広く使われている工業材料です。代表的な例としては、石油からガソリンを作る石油精製の触媒として使われています。

 一方、ゼオライトの合成は、複雑な中間状態を経由するため、「この機能を発現させたい」と、ゼオライトの合成過程を《ねらって》制御(コントロール)することはできません。さまざまな研究者・メーカーが、試行錯誤をしながらつくっているのが現状です。そこで、ゼオライト合成や得られる機能を意図的に制御できる手 法を開発しています。現在は、自動車排ガス浄化触媒などに有効なゼオライト材料を開発しています。

■ゼオライトの難しさ

 先ほども話しましたが、期待した合成結果がしばしば得られない点です。論文データを読み込んで、真似してもなかなか再現できません。一方で、敷居が高い分、ゼオライトの合成の過程を微細に制御することには研究のロマンを感じます。

ゼオライトの精密な合成
ゼオライトの精密な合成

■二酸化炭素回収と資源化

 もう一つの研究のキーワードです。吸着材から二酸化炭素を回収し、他の炭素原料へ変換(資源化)することができれば、温室効果ガスを削減しつつ、それらを有効に利用することも可能です。しかし、このプロセス(カーボンリサイクル)は、回収するための高温処理や、資源化の低い反応効率などが要因となって、多量のエネルギーを必要とします。結果的に温室効果ガスの発生につながるため、カーボンリサイクルを省エネルギー化する必要があります。

 研究では、二酸化炭素の回収と資源化を同時に、かつ低エネルギーで進行させることのできる複合材料を、経産省の委託で高知大、中国電力と共同研究をしています。ゼオライトで培った合成技術を、プロジェクトに生かせれば、と思っています。

カーボンリサイクルにかかる多くのエネルギー
カーボンリサイクルにかかる多くのエネルギー

■否定しないこと

 研究で心掛けていることです。偶発的なデータでも、解釈次第でプラスに転じることがあります。期待した合成結果が得られなくても、その結果も次の合成を考える際に役立つので、無駄なデータではありません。

■夢

 ゼオライトの合成過程を分子レベルの知見に基づいて解析する手法を開発しました。次は、合成過程の制御手法を論理立てて確立することが目標です。この基礎研究によって、試行錯誤で開発していた材料を、短期間で開発できることになり、求める触媒を迅速につくることで、さまざまな社会ニーズに柔軟に対応できるようになります。

 

PROFILE
山口県出身。広島大工学部卒。広島大大学院先進理工科学研究科博士課程修了。ゼオライト研究発表会・若手優秀講演賞(2018年)、日本化学会優秀講演賞(19年)など受賞。2015年から現職。

※プレスネット2021年12月23日号より掲載

 

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投稿者名: プレスネット

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