2025年1月21日
広島大学輝く学生にズームイン!! 第2回資産形成学生論文アワード2024優秀賞受賞
第2回資産形成学生論文アワード2024(投資信託協会主催)で、広島大大学院1年の鍋島萌花さんと経済学部3年の和泉晴香さん、姫野柚葉さんの共著論文「双曲割引が老後の貯蓄に与える影響」が、優秀賞を受賞 。若者の視点で分析・提言における将来性やオリジナリティを重視した審査により、優秀であると認められ高く評価された。
豊かな人生を送るために、一人一人が自分の資産とどう向き合っていくのか、未来の投資による資産形成の在り方について自由な発想による論文・レポートを提出。最優秀賞は該当なし、優秀賞1点、佳作1点、敢闘賞1点、アイデア賞1点の計4点を選んだ。
鍋島さんら3人は、証券会社と組んでデータ分析をする角谷快彦教授(同大大学院人間社会科学研究科経済学プログラム)の研究室のゼミ生。和泉さんと姫野さんは、昨年4月に同研究室に配属されたばかりなので、論文の書き方などを先輩の鍋島さんに教えてもらいながら3人で夏休みに研究した。金融庁が提唱した老後2000万円問題という社会的な課題があり、多くの人が貯蓄に不安を抱えている現状がある。3人は目先の利益を優先しがちな行動傾向である双曲割引という心理的要因に着目し、証券会社と同研究室が共同で実施した調査結果を基に、1カ月半を掛けて65歳以上の人の貯蓄額と双曲割引の関係について分析し、双曲割引が老後の貯蓄に与える影響について研究し実証的に示した。
和泉さんは「周りの人の支えがあったおかげで受賞できた」、姫野さんは「データ分析の基礎的なことを学び始めたばかりで、スキルがない状態からの研究だった」、鍋島さんは「日本の全国規模の論文大会に応募するのは初めてなので、後輩のサポートなど試行錯誤しながら研究した」と、それぞれ受賞を喜び「今回の経験が、今後の研究の支えになる」と目を輝かす。指導した角谷教授は「受賞を自信にしてほしい」とエールを送り、目を細める。
2024年12月17日
【広島大学の若手研究者】子どもたちに最低限の質の良い教育を
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大大学院人間社会科学研究科 教育科学専攻国際教育開発プログラム 准教授
谷口 京子さん
専門は開発途上国の教育開発学 論文は英語で。海外の人に読んでいただきたい
開発途上国の教育開発が専門です。児童生徒の学力やその伸びの要因、進級阻害(留年・退学・転校)要因、学校運営などを研究しています。
独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施しているボランティア派遣事業で、開発途上国で生活しながら課題解決に貢献する青年海外協力隊に応募し、アフリカのマラウイ共和国に派遣されたことです。マラウイには、中・高等学校の理数科教師として2007年から2年間過ごしました。マラウイの子どもたちは、学校に登校できることが幸せだと思っているので、楽しく熱心に勉強に取り組んでおり、そのような子どもたちと接したことがきっかけでした。マラウイは、教育環境が未整備であり地域によっては子ども100人に対して教師一人しかいないという学校もありました。また、大学進学率は、約1%であり、ほんの一握りの子どもたちしか大学に通うことができない環境でした。 マラウイなどの開発途上国の教育が改善するように、研究をしていきたいと思いました。
アフリカに渡航した経験がなかったので、マラウイがどのような国であるか想像がつきませんでした。インフラが整備されておらず、停電が続くと木炭で火を起こして料理をしていました。生活には困りましたが、よく周りの人々が助けてくれました。地域住民とのつながりが深く、物質的には豊かではなかったですが、心は豊かだったと思います。生徒とは、勉強の仕方や将来の夢についてよく話をしました。コミュニケーションには困らなかったですね。
アフリカに1年に1~2回、フィールド調査に行き、そこで得られたデータを基に開発途上国の教育開発計画や教育政策について研究をしています。学力を伸ばす方法や、中途退学率が高いのでその要因を追求し、より良い学校運営などを研究しています。
研究の対象国はアフリカやアジアの開発途上国が多いので、研究成果を海外の人々が読めるように英語で論文を書くようにしています。年に2~3本投稿し多くの人々に論文を読んでもらい、開発途上国の状況を少しでも改善できればと思っています。
子どもたちは生まれてくる親や国を選べません。どの国で生まれ育っても最低限の生活を保てるようになることが大切です。私は、子どもたち全員が最低限の質の良い教育を受けられることがその一歩であると思います。教育の質の向上はすぐに成果が出なくても、いつか必ず成果が出ると信じて研究を続けています。
2024年11月19日
【東広島の力〈アーカイブ〉】食協株式会社(本社・広島市、志和精米工場・東広島市志和町冠)
米の卸を中心に生活必需品を扱う食協(本社・広島市南区、武信和也社長)。2022年には、武信社長の故郷である東広島市志和町の山陽自動車道志和インターチェンジ近くで、最新鋭の設備を備えた志和精米工場が稼働した。志和精米工場の稼働を機に、さらなる飛躍を期す食協を取材した。(日川剛伸)
志和精米工場は、鉄骨2階建て延べ床面積約8000平方㍍の規模。同社の志和流通センター内に整備した。サタケ(東広島市)の最新鋭次世代型精米プラントを導入し、コンピューター制御による全工程一元管理を実現した。毎時30㌧の処理能力は国内トップクラスだ。
安佐北区の旧工場が老朽化したため新築移転。処理能力は旧工場と比べ5割も高まった。工場に隣接して、冷蔵や冷凍、常温、低温の四つの温度帯を持つ食品倉庫を持つ。工場は食品管理システムの国際基準である、HACCPの認定工場でもある。
食文化を伝えよう、と積極的に工場見学も受け入れる。地元の小中学生たちを中心に、これまでに5000人を受け入れた。実際に動いている機械を見ながら、最新の技術について学べるほか、各産地のごはんの食べ比べや、食品倉庫の見学もできる。倉庫では、極寒のマイナス20度の世界を体感でき、子どもたちに人気という。
武信社長は「飽食の時代だからこそ、工場見学を通して、日本人の食文化の原点である米の大切さを知ってもらいたい」と話す。
食協は、1950年に県内の米穀小売業者で発足した広島食糧協同組合が前身。食協は同組合の全額出資で設立された。軸となる米穀の卸事業のほか、食品の卸事業、LPガスや灯油などを販売する燃料事業、アクアクララ中国では、宅配水事業を展開する。
米穀は中四国地方を中心に集荷し、精米して販売する。取引先は中四国や九州地区の量販店や大手コンビニ、米穀店などだ。オリジナルの商品開発にも力を注ぐ。食品は業務用の小麦粉や食用油、調味料などを扱い、大手食品メーカーなどに納入する。米穀事業と食品事業で売上高の9割を占める。
今年からグループ会社「食協ロジスティックス」の物流事業が本格スタート。7月には、同流通センター近くに、志和精米工場で精米する玄米を保管する第一倉庫が完成。近く、食品の原材料を入れる第二倉庫の建設に着手する予定。その後、多目的に使用する第三倉庫の建設も計画する。
物流倉庫の建設は、同センターが手狭になったことや、災害時の迅速な供給体制を確立することなどに加え、物流のアドバンテージとなる志和IC近くの好立地を生かしたいからだ。
3年前から大学生の新卒採用にも積極的に取り組む。昨年は11人、今年は20人が入社した。全社員170人のうち、20代が50人を超えるようになった。会社説明会には、武信社長自ら出席し、会社の思いを話す。CMには若い社員を登用し親近感をアピールする。こうした戦略が奏功してか、日経が調査した大学生人気企業ランキングの中四国に本社を持つ会社で昨年は13位、今年は8位に入った。
その若い社員を中心に教育にも力を注ぐ。全社員を対象に研修を徹底し、「食協MBA」という研修では、入社1~3年目の社員を中心に、社会人としての礼節や、損益の知識などを徹底して教育する。「人は財産。会社が伸びるためには人財教育は不可欠」(武信社長)と、社員教育に投資する。『一人一人が主役。社員一人一人が輝く年に』。今年の食協のキャッチフレーズだそうだ。
何十年もママさんバレーボール大会や、少年ソフトボール大会を主催していますし、広島東洋カープやサンフレッチェ広島のスポンサーも務めています。また、子どもたちを対象にした田植えや稲刈り体験、工場見学も積極的に行っています。
社会貢献に目を向ける背景には、四つ葉のクローバーをあしらった企業マークに込めた思いがあります。四つ葉のクローバーは、「愛情・健康・快適・安全」の四つを表現しており、四つを追求しようとすれば社会貢献は不可欠だからです。単に利益だけを求める会社では、お客さまから信頼を得ることはできません。
仕事を進めていく上での失敗やミスは、人間ですから起きることはあります。ただ、誠心誠意、真摯(しんし)な対応や努力を続けていけば、最初は相手方に怒られても、通じるときが必ずきます。だから、社員には、特に幹部社員には「クレームは食協のファンをつくっていくチャンスだぞ」と訓示しています。
だからでしょうか。「一人一人が一生懸命、お客さんをサポートし、礼節を重んじる」という言葉が自然な形で、会社の風土になってきているようです。
「日本一」は2016年の社長就任以来、かじ取りのキーワードに掲げていた言葉です。技術も生産能力も日本一の志和精米工場を整備しましたし、米の博士号といわれる「三ツ星お米マイスター」取得者も全国一になりました。「五ツ星お米マイスター」も日本一を目指します。
次に掲げるのは、社員満足度が日本一高い会社です。社員が、やりがいを持って伸び伸びと働ける会社にしたいと思っています。
会社概要
本社は広島市南区松川町。会社の前身は1950年設立の広島食糧協同組合。91年に同組合が全額出資し、食協株式会社を設立。2018年に東広島市志和町に志和流通センターを開設。22年、深川精米工場(安佐北区)を志和町に移転し、志和精米工場とする。24年3月期の年商は240億円。今年度は250億円を目指す。社員数は170人(24年4月1日現在)
2024年11月19日
【広島大学の若手研究者】生き物っぽいモノをつくる研究
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院統合生命科学研究科助教(超越化学グループ)
松尾 宗征さん
分子システムの「自己」の創発を目指して
専門は化学です。物理学や生物学も使って研究をしています。生物は、化学反応で動いています。化学反応を使って生き物みたいに動くウェットな人工生命をつくっています。
幼少時から生き物が大好きで、ゾウをはじめとした多くの生き物を飼育していました。自然と生き物の死に直面することも多く、「生命とは何か」に興味津々でした。それを解明するために、中高生の時には生物を人工的につくってみたいと本気で考えていました。また、高校生の時に読んだ「生命システムをどう理解するか」という本にあった研究にひかれ、その研究室に念願かない卒研から飛び込み今に至ります。さまざまな先生や仲間たちとのご縁もあり、今楽しく研究できています。
化学的に考えると一年前の自分はもういません。骨すら入れ替わり、98%は物質としては残っていないです。しかし、一年前の自分は物質的には残っていなくても、確かに今ここにいるのでとても不思議です。物質的には全く違うモノになっているのに、摂食し排泄する物質の流れの中で、生命としては回帰的に「自己」を維持し続けていることが大事です。こうした性質をもつ分子システムをつくる研究をしています。
一つ目は生き物っぽいモノをコンピューターの中のプログラムとしてつくる。二つ目はロボットみたいな硬いものでつくる。三つ目は、柔らかいみずみずしい実態のあるものでつくる。私は、生き物が好きなので三つ目のウェットな人工生命をつくっています。進化できる分子の集合体を人類で初めてつくるのが夢です。
今までの私の研究は主に三つに分けられます。一つ目は、私が設計・合成した餌を自分で食べて回帰的に成長する液滴、二つ目は自分で成長・分裂し増殖できる分子の集合体、三つ目は有機物や無機物からなり自発的な振動状態を我々の心臓のように継続する自律アクチュエータ(エネルギーを動きに変える装置)をつくりました。
一つ目の成果が2021年に科学誌Natureの姉妹誌「NatureCommunications」、2022年には月刊誌「化学」に掲載されました。それにより科学誌Scienceの発刊元や英国王立化学会など世界中からインタビューを受け研究成果が波及しました。これまで、自分の好奇心で行ってきた研究が少しでも人類の科学史に貢献できたことを実感し、自分の好奇心を信じ研究を加速させていくモチベーションの一助になっています。
2024年11月18日
【東広島の力〈アーカイブ〉】マイクロンメモリ ジャパン株式会社(本社・広島工場 東広島市吉川工業団地7-10)
米国半導体大手のマイクロンを親会社に持つマイクロンメモリジャパン(本社・広島工場=東広島市吉川工業団地)は、与えられたデータから新たなデータを生み出す、生成AI革命を実現する重要な技術が集積。日本の半導体産業をけん引する企業だ。(日川剛伸)
いまやAI(人工知能)は自動運転車の実用化、仕事や家事の効率化、医療や教育のICT化、工場のスマート化など、驚異的な速さで、私たちの生活を変革している。そのAIを支える半導体メモリ「DRAM」の製造と開発の拠点が、広島工場だ。
広島工場では、HBM3E(広帯域幅メモリ3E)という、業界最高水準で高性能と省電力の両立を実現した製品の量産を担う。1β(ベータ)DRAM技術を応用した量産体制が整いつつある。他にもマイクロンでは、DDR5、LP5、HBM、CXL、データセンターSSDなど、多種多様な製品群を製造・開発し、AIの未来を明るく照らしている。
マイクロンでは、多様性・公平性・包括性を重視するDEI経営を実践。その社内風土が、イノベーション(技術革新)の源泉になっている。誰もが能力を発揮できる職場環境を目指し、女性の積極採用も進める。従業員リソースグループ(ERG)を通じて、従業員同士がつながり、キャリア形成を支え合い、リーダーシップなどの能力開発ができる場がある。
入社後は、エンジニアやテクニシャンを対象に、仕事に必要なスキルや考え方、成長意欲が身につくOJTなど、現場の即戦力として育成する教育制度が充実。2024年には、広島県から「働きがいのある会社」優秀企業の認定を受けた。
マイクロンでは関係各社と協力しながら、開発、生産、調達といった企業活動全般において社会的な責任を果たしている。
サステナビリティ(持続可能性)実現に向けて、温室効果ガス、エネルギー、水、廃棄物という四つの重点目標を据えて、事業活動に伴う環境負荷の軽減に取り組んでいる。
広島工場の従業員は寄付や、清掃・イベント運営のボランティア活動にも積極的に参加し、東広島地域への貢献に努めている。
いつでも書き込み・読み出しが可能な半導体メモリ。電子機器を動かす上で必要となる、文字や画像といった情報をためておく役割を担う。DRAMは大容量を実現できるため、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲームなどあらゆる電子機器に使われている。
2024年11月17日
【東広島の力〈アーカイブ〉】株式会社大創産業(本社・東広島市西条吉行東)
100円ショップ「ダイソー」を運営する業界最大手の会社だ。今年が創業52年目。1972年にトラックの移動販売からスタートした会社も、今や世界26の国と地域に5325店舗(国内4341店舗、海外984店舗。2024年2月現在)を出店するまでに大躍進を遂げた。(日川剛伸)
ダイソーの大きな武器になっているのが、豊富な商品数だ。生活必需品からし好品まで、約7万6千アイテムを取りそろえる。その90%が自社開発商品で、バイヤーたちが世界各国のメーカーと組み、毎月800アイテムの商品を開発している。
2020年6月には、本社(東広島市)にあった商品開発・仕入れを担う商品本部を東京に移転した。「お客さまのニーズやトレンドをいち早く商品開発に生かしたい」(総務部広報課)思いからだった。
商品の品ぞろえと合わせ、品質も重要視する。「100円の高級品を売る」。創業者の矢野博丈氏(故人)の思いを全社員がくみ取り、一つ一つの商品に心血を注いだ。たとえ原価が99円になったとしても100円で売り続けた。利益が1円でも1000万個売れば1000万円の利益になる、との信念からだった。ただ、同業他社やスーパーとの競争が激しくなる中、2000年代に入ると、100円以外の「高額商品」の販売を始めた。
近年は新業態の「300円ショップ」に力を入れている。店名は「THREE(3)」と「HAPPY(幸せ)」を掛け合わせて、「THREEPPY(スリーピー)」。300円で幸せな生活を送れるようにとの願いを込めた、という。
さらに、「日用品をちょっと楽しく」との思いを形にした、「Standard Products」(下部参照)と名付けた店舗展開にも乗り出している。
総務部広報課の後藤晃一課長は「100円以外の高額商品や新しいアイテムを投入したことで、商品のバリエーションが格段に増え、出店数の増加につながった。会社の大きな転機の一つになった」と目を細める。
黎明期での転機は、常設店舗で営業ができるようになったことだ。創業後、しばらくはスーパーの駐車場に店舗を構える移動販売方式で100円ショップを運営。その後、1980年代に入って、スーパーのオーナーからテナントでの出店を誘われたことで、屋内店舗での営業をスタート。移動販売と比べて格段の信頼を得ることになり、後に100円ショップを全国・世界展開につなげていく大きな原動力になった。
創業から約半世紀。100円均一というジャンルで、世界に初めて通用するチェーン展開のビジネスモデルを実現した。昨年、「DAISO」の企業ブランド価値を世界に広めようと、世界共通のコーポレート・アイデンティティを掲げた。
スローガンは『だんぜん!ダイソー』だ。商品を手にした消費者に、いつでも「だんぜん!ダイソー」と言ってもらえるよう、商品開発や快適な店舗空間、サービス向上に取り組んでいく、という。
東広島では、300円ショップ1店舗を含め9店舗を展開する。創業地の東広島で生まれ育った企業として、市民には感謝と恩返しの気持ちを持っているという。「地元が誇れるような世界で羽ばたく企業でありたい」との思いを胸に、目指すは東広島初のグローバル小売業だ。
Standard Products
コンセプトは「ちょっといいのが、ずっといい」。華美なデザインをそぎ落とし、その分、使い勝手の良さに重点を置き、シンプルなデザインに特化した商品で構成。環境配慮商品などサステナビリティを意識した商品開発にも力を注ぐ。2024年10月末現在、国内で150店舗、海外で7店舗を展開。
沿革
1972年 矢野博丈氏が矢野商店として開業
1977年 株式会社大創産業に法人化
1991年 直営1号店オープン。
1991年 100円ショップ・ダイソーのチェーン展開本格化
1997年 通産大臣賞「貿易貢献企業賞」受賞
2000年 ベンチャー・オブ・ザ・イヤー受賞
2001年 台湾と韓国に進出。以後、世界への出店を加速。
2018年 2代目社長に矢野靖二氏就任
2024年11月16日
【東広島の力〈アーカイブ〉】株式会社サタケ(本社・東広島市西条西本町)
創業は1896(明治29)年。創業者の佐竹利市が日本で初めての動力式精米機を開発したことに始まる。以来、時代とともに変化する顧客のニーズに応えながら成長を続けてきた。今や食品加工機械の世界トップメーカーとしての揺るぎない地位を確立している。(日川剛伸)
佐竹利市(故人)が種をまき、二代目・利彦(故人)が幹を育て、3代目・覚(故人)と4代目・利子(故人)が枝葉を付けてきた。いつの時代にあっても、経営者と社員が「サタケ精神」である、「何事にも挑戦し、謙虚に学び、改善・改革する」という姿勢を持ち続けてきたことが、会社の発展の礎になった、という。
精米機で始まった米の加工技術の分野では、現在では、収穫から調製加工、精米、計量包装までの全ての工程で使用される機械を生産。米の加工技術を応用した小麦製粉や食品分野の他、環境機器や産業機械の分野にも進出している。
米の消費量が減少傾向にある中で、消費者には「安全・安心・美味・健康」を、生産者には「利益が出せる提案」を心掛ける。消費者サイドに目を向けた商品では、2008年、GABA(ギャバ)生成装置を開発し、「ギャバライス」を手掛けた。
「お米の力で元気な人を創る」というフレーズで玄米に含まれるギャバという栄養成分に着目。そのギャバを白米に浸透させ、栄養と食味を両立させた「ギャバライス」を世界で初めて市場に送り出した。現在、東広島市や東京都、ハワイなどに直販店舗を持ち、普及に躍起だ。
一方で、生産者側に目を向けた取り組みでは、15年に市北部の豊栄町清武地区農家と共同で株式会社「賀茂プロジェクト」を設立。サタケが持つ穀物加工や商品開発マネジメントのノウハウを農家と共有することで、付加価値の高い農業を生み出し、持続可能な農家を実現していくのが狙いだ。
松本和久経営企画室長(現・代表取締役社長)は「農家の方々があってこそサタケは存在する。農家の方々への恩返しを込め、豊栄の取り組みを各地域に展開できるようになれば」と期待する。
サタケの発展を支えてきた原動力になったのは、技術開発だ。研究・開発部門には、広島だけで約300人が従事。現在までに3000件を超える特許を取得している。
創業当初から培ってきた「動力」の技術は今、各分野で生かされる。一例を挙げれば、独自技術の「SIMモータ」は、電車のブレーキを駆動させる、コンプレッサの動力源として採用されている。米国航空宇宙局からも、「サタケのモータをロケットに搭載したい」と引き合いがあったほどだ。
海外への展開は、戦前にさかのぼる。積極的な展開を始めたのは、1980年代からで、どの種類の米にも対応できる精米技術を武器に、アジア、北米、欧州などへ販路を広げていった。現在は12カ国に生産・販売拠点を持ち、150カ国に製品を供給するグローバルカンパニーに成長を遂げた。
創業は1896年。東広島に本社を持つ企業として、「東広島でリーダーシップの取れる企業に」と松本さん。今後は、中小の顧客が利益を出せるよう、付加価値が高い安価な商品の開発に努める。
サタケグループの社員数は世界で約2700人。毎年、新卒者を採用しながら、誰もが働きやすい環境づくりに取り組んできた。経営企画室長(現・代表取締役社長)の松本和久さんに、サタケが求める人材や、進めてきた働き方改革などについて話を聞いた。
―若い力に期待することは。
求めているのは、「コミュニケーション」「クリエイション」「チャレンジ」と、英語力です。英語表記の頭文字を取り、「3C」プラス「E」と呼んでいます。英語が話せないと入社できないわけではありませんが、サタケの海外での展開を強化していく上で、英語力は不可欠となります。
―若い人を育てる観点から、2015年にサタケカレッジも開設されました。
入社2年目以降の若手社員を対象にした社内大学です。年間に10日程度、田植えや稲刈りなどの農業を体験したり、人間学や財務などを学んだりします。一次産業の苦労を知り、人間の幅を広げてもらうのが目的です。将来的には、一般のお客様向けの講座も開設したいと思っています。
―働き方改革も進められています。
サタケには「会社をとりまくすべての人々を幸せにする」という基本方針があります。この方針に基づいて、社員と家族が幸せになるような環境の整備に努めてきました。働き方改革というと、今、流行語のようになっていますが、サタケでは10年前から取り組んでいます。
―具体的には。
2004年には、社員が仕事と育児を両立できるよう、社内保育室を開設しました。仕事と家庭が両立できるよう、男性の育児参加にも積極的に取り組んでいます。昨年、試験的に導入した週休3日制は、今年も7~8月に行います。14年からはノー残業に取り組み、現在、直接部門を除く社員の大半が定時に退社しています。昨年、奨学金を返済している社員に、返済の一部を援助する制度も創設しました。
沿革
1896年 初代社長の佐竹利市が日本で最初の動力精米機考案、生産を開始
1908年 竪型研削精米機開発。吟醸酒誕生の原動力に
1962年 コンパス精米機発売。大型精米設備の独占供給開始
1974年 籾摺機の革命と呼ばれる揺動選別方式のライスマスター発売
1986年 世界初の食味計開発
1991年 製粉機分野に進出
1995年 マジックライス新発売
2008年 GABA生成装置開発
2024年10月15日
【広島大学の若手研究者】異文化理解の課題・進める方法について研究
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院人間社会科学研究科 講師
デラコルダ 川島・ティンカさん
専門は宗教社会学
異文化と自分の文化を理解できる人を増やしたい
物事はいつも見かけ通りとは限らない
専門は宗教社会学で、日本とヨーロッパの宗教から社会の特徴を明らかにする研究をしています。仏教やキリスト教という違いはありますが、教義(宗教の教えの内容)から離れて一般の人たちが日常的な生活の中で宗教性を認識することに、共通する部分があることが分かりました。聖地巡礼や困った時の神頼みなどがその例です。
教育学部の異文化間教育推進室に所属しています。宗教社会学で学んだことを基礎として、異文化理解における課題や異文化理解を進める方法について研究しています。CEDAR(セダー)という研究グループのワークショップに参加するなど、彼らの方法論を参考に日本での効果的な方法を探っています。
CEDARというのはアメリカに拠点を置く国際的なグループ。とても興味深い異文化理解の方法を実践しています。互いの違いを認識し、それを変えるのではなく受け入れながら共存することを目指します。個人それぞれが文化的な背景を持っているので、それらの文化を大切にしています。各個人のアイデンティ形成には、所属する文化はとても重要です。彼らのワークショップでは約2週間、いろいろな人たちと共同生活し、異文化と接触しながら互いの理解を深めます。すごく緊張感のある生活ですが、異文化の理解とともに自分の文化についても深く考える機会になります。
授業などで異文化理解の前に、自分と自分の文化を認識するという活動を行っています。私の専門分野の宗教社会学を活用し、自分の宗教意識について他の人と比較するというものです。これによって日本にも多様な宗教意識があり、日本人と外国人という図式だけでは他の文化を理解することができないことに気付くことができます。ワークシートを作成し大学で実践したところ、学生にとても有効であることが分かりました。
現在は、CEDARの方法を日本でも応用できるように研究を進め、日本で使用できるようなワークブックの出版に取り組んでいます。これを基にワークショップを定期的に開き、異文化理解の誤解を減らし、より深く異文化と自分の文化を理解できる人が増えるようになってほしいと思います。特に、教育学部で授業することによって将来、学生が学校の先生になり、多様な文化的背景を持つ子どもたちを支援してほしいと考えています。
東広島市には多様な国から来た人たちが住んでいます。その子どもたちも増え続けているので、学校での教育には多くの課題があります。いろいろな文化的背景を持っている人や子どもたちを理解していくことで、楽しく住める街になると思います。
2024年9月16日
頑張る広島大生 陸上競技部長距離パート 出雲駅伝に12年ぶり出場
広島大学陸上競技部の長距離パートが10月14日に出雲市で行われる「出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝)」に12年ぶりに出場する。出雲駅伝は箱根駅伝、全日本大学駅伝と並ぶ大学三大駅伝の一つ。私学の強豪が集う中、選手たちは「全国に広島大をアピールしたい」と話している。
今年の出雲駅伝に出場するのは21チーム。今年の箱根駅伝上位校の9校のほか、全国の予選を勝ち抜いた大学が参加する。広島大は昨年11月の中四国大学駅伝で3位に入り、中四国学連代表として、出雲駅伝に12年ぶり4回目の出場を決めた。国立大は広島大のほか、岡山大、名古屋大、鹿屋体育大が出場する。
広島大・長距離パートの現在の部員数は学部生、院生を合わせ22人。「Challengers」をスローガンに掲げ、「格上の相手であってもひるむことなく、思い切りぶつかる」ことを部の支柱に据え練習に取り組んできた。
練習は週に5日。一日平均で20㌔の距離をこなす。部員が主体的に練習メニューを考える。選手間で改善点などをアドバイスし合いながら、練習に励む。アドバイスをする側も、気づきが生まれ、成長につながる、という。
現部員で高校時代に全国高校駅伝に出場したエリート選手はいない。ただ、考える姿勢を重視した練習が、選手の記録の伸びを促した。5000㍍の上位8人の平均ベストは14分58秒と、中四国の大学ではトップクラスを誇るほどになった。
本番まで1カ月。島根県の石見智翠館高出身の橋井佑空さん(情報科学部2年)は「普段、テレビで見る選手と一緒に走れることは、貴重な経験になる。思い出に残るレースにしたい」ときっぱり。兵庫県出身で大学院先進理工科学研究科1年の大森勇輝さんは「最大限の力を発揮できるようにする」と意気込む。
広島大陸上競技部は、短距離の山本匠真さん(工学部4年)が、ことしのパリ五輪の代表候補に選ばれた。長距離パートの主将を務める南凱士さん(教育学部3年)は「身近な先輩が注目され刺激になった。自分たちも負けずにアピールしたい」と話しながら、「国立大は、私学の強豪校と比べ、練習環境や部の活動費などでさまざまなハンディを背負っている。そんな中、国立大学でもやれる、というレースを見せたい」と言い切る。
【出雲駅伝】
平成元年から始まった。第1回大会は、「平成記念出雲くにびき大学招待クロスカントリーリレーフェスティバル」の名称で開催。第6回大会からは現在の「出雲全日本大学選抜駅伝競走」に名称変更。「出雲駅伝」の略称は、第19回大会に愛称化され、翌20回の記念大会から正式略称となった。今年が36回目。出雲大社前をスタート、出雲ドーム前をゴールに6区間45・1㌔のコースで競われる。
2024年8月19日
【広島大学の若手研究者】専門はスポーツ科学 人の運動制御を研究
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大大学院人間社会科学研究科准教授
進矢 正宏さんさん
予測誤差は、神経系にとって重要な情報
私は、バイオメカニクス(生物力学)・心理学・生理学などの分野をまたいだ学際的なスポーツ科学を目指しています。
高校生の時に空手をしていて、できなかった中段回し蹴りの技ができるようになった時に、何がどう変わってできるようになったのか、できる人とそうでない人は筋肉の数など物理的には変わらない体なのに、何が違うのかということに興味をもったことですね。
人の運動制御が専門です。いつどのように筋肉を動かせば思った通りの運動ができるのかを神経系が計算しています。しかし、具体的にどういう計算をしているのかは誰も知らないので、人の動きを計測することにより人の動きがどのように制御されているのかを研究しています。最近では、未就学児の歩行制御の研究を始めました。歩き始めの子どもがよく転ぶのは頭が重いなどの物理的な要因か、どういう制御が未完成なのかを明らかにするための研究です。
私たちは、特に何も意識せずに歩いていますが、神経系は常に次の着地について予測しています。例えば階段で、もう一段あるはずと思って登っていたが実際にはなかった時に「かくっ」となるのも、こういったシステムが神経系に備わっているからです。思った通りにできなかったという予測誤差は、神経系にとっては非常に重要な情報です。「思ってたんとちゃう!」というのは、M-1グランプリで優勝候補だったお笑いコンビが決勝前に敗れた時のコメントですが、私の研究のキーワードでもあります。
運動についてですが、練習でできたことが本番でできなかったのは何がどう変わったのかなど、研究して解明できると面白いです。人間の動作は複雑です。それだけに未知の世界を明らかにする楽しみがあります。いろいろな手法を組み合わせ、分析の仕方などを開発して研究し誰も知らないことを知ることは楽しいですね。
うまくいかない動きは、自分の脳や神経が一生懸命計算した結果です。人と比較してできていないように見えるかもしれませんが、人間の体の複雑さを考えると相当できています。筋力が落ちて思った通りに歩けないという経験をするからこそ、今ある体でどうやって動けばいいのかを一生懸命脳が計算します。思った通りできなかったという経験は、脳が計算方法を変えて新しい動きを作って行くという過程なので非常に大事です。失敗しつつも運動をやり続ける。やらなかったら脳はアップデートしません。できなかったことをポジティブに捉えて次に挑戦してほしいです。