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【広島大学の若手研究者】生き物っぽいモノをつくる研究

2024年11月19日

【広島大学の若手研究者】生き物っぽいモノをつくる研究

プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤

今回お話を聞いたのは

広島大学大学院統合生命科学研究科助教(超越化学グループ)
松尾 宗征さん

松尾 宗征さん
訳:常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションである

分子システムの「自己」の創発を目指して

■専門分野について

 専門は化学です。物理学や生物学も使って研究をしています。生物は、化学反応で動いています。化学反応を使って生き物みたいに動くウェットな人工生命をつくっています。

■研究のきっかけ

 幼少時から生き物が大好きで、ゾウをはじめとした多くの生き物を飼育していました。自然と生き物の死に直面することも多く、「生命とは何か」に興味津々でした。それを解明するために、中高生の時には生物を人工的につくってみたいと本気で考えていました。また、高校生の時に読んだ「生命システムをどう理解するか」という本にあった研究にひかれ、その研究室に念願かない卒研から飛び込み今に至ります。さまざまな先生や仲間たちとのご縁もあり、今楽しく研究できています。

研究員たちとの議論風景
研究員たちとの議論風景

■研究内容

 化学的に考えると一年前の自分はもういません。骨すら入れ替わり、98%は物質としては残っていないです。しかし、一年前の自分は物質的には残っていなくても、確かに今ここにいるのでとても不思議です。物質的には全く違うモノになっているのに、摂食し排泄する物質の流れの中で、生命としては回帰的に「自己」を維持し続けていることが大事です。こうした性質をもつ分子システムをつくる研究をしています。

■生き物っぽいモノのつくり方

 一つ目は生き物っぽいモノをコンピューターの中のプログラムとしてつくる。二つ目はロボットみたいな硬いものでつくる。三つ目は、柔らかいみずみずしい実態のあるものでつくる。私は、生き物が好きなので三つ目のウェットな人工生命をつくっています。進化できる分子の集合体を人類で初めてつくるのが夢です。

研究室で研究員たちとの実験風景
研究室で研究員たちとの実験風景

■研究成果 ―オートポイエティックな超分子システム―

 今までの私の研究は主に三つに分けられます。一つ目は、私が設計・合成した餌を自分で食べて回帰的に成長する液滴、二つ目は自分で成長・分裂し増殖できる分子の集合体、三つ目は有機物や無機物からなり自発的な振動状態を我々の心臓のように継続する自律アクチュエータ(エネルギーを動きに変える装置)をつくりました。

■研究のモチベーション。

 一つ目の成果が2021年に科学誌Natureの姉妹誌「NatureCommunications」、2022年には月刊誌「化学」に掲載されました。それにより科学誌Scienceの発刊元や英国王立化学会など世界中からインタビューを受け研究成果が波及しました。これまで、自分の好奇心で行ってきた研究が少しでも人類の科学史に貢献できたことを実感し、自分の好奇心を信じ研究を加速させていくモチベーションの一助になっています。

PROFILE
 1985年生まれ。東京都港区出身。2019年東京大博士号取得、ExCELLS特任研究員。20年広島大助教。23年東京大特任助教、広島大客員講師。24年広島大助教、東京大特任研究員、文部科学省卓越研究員、North Minzu University客員教授を兼任。

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