2023年2月20日
【広島大学の若手研究者】研究テーマは社会心理学
プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
大学院人間社会科学研究科准教授
小宮 あすかさん
研究テーマは社会心理学
後悔は学習を促進する機能を持つ
心の謎を解き明かしたい
高校生の頃、ピアノを習っていた先生が、レッスン中に「北京ダッグが食べたい」と言ったかと思うと、その週には中国まで食べに行かれるほど豪快な人で、「この人の心はどうなっているのだろう」と思ったことが、心理学の道に進むきっかけになりました。
心理学は心の仕組みや、心と行動の関連を理解しようとする学問です。現在の心理学は、実験や調査で集めたデータから心の在り方を推測し理解しようとする科学的なアプローチが主流です。私はその中でも後悔をテーマに研究を進めてきました。
後悔は大学院時代から取り組んでいるテーマです。過去のことを悔やんでも何も変わりません。それでもなぜ人は後悔するのだろうか、ということに、興味を引かれました。
具体的な研究としては、後悔の日米比較研究が挙げられます。例えば、人生で経験した後悔を日米の大学生に挙げてもらうと、その内容は日本と米国で少し違います。自分だけに関わるような個人的な後悔では、日本人も米国人も「チャンスを逃してしまった」「もっと勉強すればよかった」といった自己実現に関するものが多くみられます。一方で、「人を傷つけてしまった」「手助けできなかった」というような対人的な後悔では、日本人のほうが米国人よりも強く後悔し、引きずります。
これらの後悔経験のパターンは、日本人が人と人との社会的な関係性を大事にする文化に住んでいることに由来すると考えています。そうした文化では対人的な失敗が周囲との関係の悪化や居心地の悪さにつながりやすいので、もう二度と失敗しないように、後悔して反省する傾向があるのでは、というのが私の持っている仮説です。
実際、これまで多くの研究で後悔は教訓となり、行動の改善を促進することが示されてきています。例えば、試験で悪い成績をとったことを後悔している学生ほど、その後の学習習慣が改善され、さらに試験で良い成績をとるようになったことを示すような研究もあります。私の研究でいえば、2018年の西日本豪雨災害後に、被災者にアンケートをしたところ、豪雨災害時に「防災準備をしておけばよかった」と後悔していた人ほど、その後の災害時に防災行動をとっていたことがわかりました。
心理学は調査や実験が主な研究手法ですが、その中でも私は実験が大好きです。だいご味は、実験がうまくいって、思い通りの結果が出ることですし、難しいことは、細心の注意を払って実験がうまくいくように考えないといけないことです。
研究をすればするほど謎は増えていきます。心の謎を解き明かす研究を続けていきたい、と思っています。ゆくゆくは社会に直接還元できるような実践的な研究もしていきたいと思っています。