創業は1896(明治29)年。創業者の佐竹利市が日本で初めての動力式精米機を開発したことに始まる。以来、時代とともに変化する顧客のニーズに応えながら成長を続けてきた。今や食品加工機械の世界トップメーカーとしての揺るぎない地位を確立している。(日川剛伸)
佐竹利市(故人)が種をまき、二代目・利彦(故人)が幹を育て、3代目・覚(故人)と4代目・利子(故人)が枝葉を付けてきた。いつの時代にあっても、経営者と社員が「サタケ精神」である、「何事にも挑戦し、謙虚に学び、改善・改革する」という姿勢を持ち続けてきたことが、会社の発展の礎になった、という。
精米機で始まった米の加工技術の分野では、現在では、収穫から調製加工、精米、計量包装までの全ての工程で使用される機械を生産。米の加工技術を応用した小麦製粉や食品分野の他、環境機器や産業機械の分野にも進出している。
米の消費量が減少傾向にある中で、消費者には「安全・安心・美味・健康」を、生産者には「利益が出せる提案」を心掛ける。消費者サイドに目を向けた商品では、2008年、GABA(ギャバ)生成装置を開発し、「ギャバライス」を手掛けた。
「お米の力で元気な人を創る」というフレーズで玄米に含まれるギャバという栄養成分に着目。そのギャバを白米に浸透させ、栄養と食味を両立させた「ギャバライス」を世界で初めて市場に送り出した。現在、東広島市や東京都、ハワイなどに直販店舗を持ち、普及に躍起だ。
一方で、生産者側に目を向けた取り組みでは、15年に市北部の豊栄町清武地区農家と共同で株式会社「賀茂プロジェクト」を設立。サタケが持つ穀物加工や商品開発マネジメントのノウハウを農家と共有することで、付加価値の高い農業を生み出し、持続可能な農家を実現していくのが狙いだ。
松本和久経営企画室長(現・代表取締役社長)は「農家の方々があってこそサタケは存在する。農家の方々への恩返しを込め、豊栄の取り組みを各地域に展開できるようになれば」と期待する。
サタケの発展を支えてきた原動力になったのは、技術開発だ。研究・開発部門には、広島だけで約300人が従事。現在までに3000件を超える特許を取得している。
創業当初から培ってきた「動力」の技術は今、各分野で生かされる。一例を挙げれば、独自技術の「SIMモータ」は、電車のブレーキを駆動させる、コンプレッサの動力源として採用されている。米国航空宇宙局からも、「サタケのモータをロケットに搭載したい」と引き合いがあったほどだ。
海外への展開は、戦前にさかのぼる。積極的な展開を始めたのは、1980年代からで、どの種類の米にも対応できる精米技術を武器に、アジア、北米、欧州などへ販路を広げていった。現在は12カ国に生産・販売拠点を持ち、150カ国に製品を供給するグローバルカンパニーに成長を遂げた。
創業は1896年。東広島に本社を持つ企業として、「東広島でリーダーシップの取れる企業に」と松本さん。今後は、中小の顧客が利益を出せるよう、付加価値が高い安価な商品の開発に努める。
サタケグループの社員数は世界で約2700人。毎年、新卒者を採用しながら、誰もが働きやすい環境づくりに取り組んできた。経営企画室長(現・代表取締役社長)の松本和久さんに、サタケが求める人材や、進めてきた働き方改革などについて話を聞いた。
―若い力に期待することは。
求めているのは、「コミュニケーション」「クリエイション」「チャレンジ」と、英語力です。英語表記の頭文字を取り、「3C」プラス「E」と呼んでいます。英語が話せないと入社できないわけではありませんが、サタケの海外での展開を強化していく上で、英語力は不可欠となります。
―若い人を育てる観点から、2015年にサタケカレッジも開設されました。
入社2年目以降の若手社員を対象にした社内大学です。年間に10日程度、田植えや稲刈りなどの農業を体験したり、人間学や財務などを学んだりします。一次産業の苦労を知り、人間の幅を広げてもらうのが目的です。将来的には、一般のお客様向けの講座も開設したいと思っています。
―働き方改革も進められています。
サタケには「会社をとりまくすべての人々を幸せにする」という基本方針があります。この方針に基づいて、社員と家族が幸せになるような環境の整備に努めてきました。働き方改革というと、今、流行語のようになっていますが、サタケでは10年前から取り組んでいます。
―具体的には。
2004年には、社員が仕事と育児を両立できるよう、社内保育室を開設しました。仕事と家庭が両立できるよう、男性の育児参加にも積極的に取り組んでいます。昨年、試験的に導入した週休3日制は、今年も7~8月に行います。14年からはノー残業に取り組み、現在、直接部門を除く社員の大半が定時に退社しています。昨年、奨学金を返済している社員に、返済の一部を援助する制度も創設しました。
沿革
1896年 初代社長の佐竹利市が日本で最初の動力精米機考案、生産を開始
1908年 竪型研削精米機開発。吟醸酒誕生の原動力に
1962年 コンパス精米機発売。大型精米設備の独占供給開始
1974年 籾摺機の革命と呼ばれる揺動選別方式のライスマスター発売
1986年 世界初の食味計開発
1991年 製粉機分野に進出
1995年 マジックライス新発売
2008年 GABA生成装置開発