100円ショップ「ダイソー」を運営する業界最大手の会社だ。今年が創業52年目。1972年にトラックの移動販売からスタートした会社も、今や世界26の国と地域に5325店舗(国内4341店舗、海外984店舗。2024年2月現在)を出店するまでに大躍進を遂げた。(日川剛伸)
ダイソーの大きな武器になっているのが、豊富な商品数だ。生活必需品からし好品まで、約7万6千アイテムを取りそろえる。その90%が自社開発商品で、バイヤーたちが世界各国のメーカーと組み、毎月800アイテムの商品を開発している。
2020年6月には、本社(東広島市)にあった商品開発・仕入れを担う商品本部を東京に移転した。「お客さまのニーズやトレンドをいち早く商品開発に生かしたい」(総務部広報課)思いからだった。
商品の品ぞろえと合わせ、品質も重要視する。「100円の高級品を売る」。創業者の矢野博丈氏(故人)の思いを全社員がくみ取り、一つ一つの商品に心血を注いだ。たとえ原価が99円になったとしても100円で売り続けた。利益が1円でも1000万個売れば1000万円の利益になる、との信念からだった。ただ、同業他社やスーパーとの競争が激しくなる中、2000年代に入ると、100円以外の「高額商品」の販売を始めた。
近年は新業態の「300円ショップ」に力を入れている。店名は「THREE(3)」と「HAPPY(幸せ)」を掛け合わせて、「THREEPPY(スリーピー)」。300円で幸せな生活を送れるようにとの願いを込めた、という。
さらに、「日用品をちょっと楽しく」との思いを形にした、「Standard Products」(下部参照)と名付けた店舗展開にも乗り出している。
総務部広報課の後藤晃一課長は「100円以外の高額商品や新しいアイテムを投入したことで、商品のバリエーションが格段に増え、出店数の増加につながった。会社の大きな転機の一つになった」と目を細める。
黎明期での転機は、常設店舗で営業ができるようになったことだ。創業後、しばらくはスーパーの駐車場に店舗を構える移動販売方式で100円ショップを運営。その後、1980年代に入って、スーパーのオーナーからテナントでの出店を誘われたことで、屋内店舗での営業をスタート。移動販売と比べて格段の信頼を得ることになり、後に100円ショップを全国・世界展開につなげていく大きな原動力になった。
創業から約半世紀。100円均一というジャンルで、世界に初めて通用するチェーン展開のビジネスモデルを実現した。昨年、「DAISO」の企業ブランド価値を世界に広めようと、世界共通のコーポレート・アイデンティティを掲げた。
スローガンは『だんぜん!ダイソー』だ。商品を手にした消費者に、いつでも「だんぜん!ダイソー」と言ってもらえるよう、商品開発や快適な店舗空間、サービス向上に取り組んでいく、という。
東広島では、300円ショップ1店舗を含め9店舗を展開する。創業地の東広島で生まれ育った企業として、市民には感謝と恩返しの気持ちを持っているという。「地元が誇れるような世界で羽ばたく企業でありたい」との思いを胸に、目指すは東広島初のグローバル小売業だ。
Standard Products
コンセプトは「ちょっといいのが、ずっといい」。華美なデザインをそぎ落とし、その分、使い勝手の良さに重点を置き、シンプルなデザインに特化した商品で構成。環境配慮商品などサステナビリティを意識した商品開発にも力を注ぐ。2024年10月末現在、国内で150店舗、海外で7店舗を展開。
沿革
1972年 矢野博丈氏が矢野商店として開業
1977年 株式会社大創産業に法人化
1991年 直営1号店オープン。
1991年 100円ショップ・ダイソーのチェーン展開本格化
1997年 通産大臣賞「貿易貢献企業賞」受賞
2000年 ベンチャー・オブ・ザ・イヤー受賞
2001年 台湾と韓国に進出。以後、世界への出店を加速。
2018年 2代目社長に矢野靖二氏就任