プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大大学院統合生命科学研究科 助教
田中 若奈 さん
研究テーマは「植物の発生遺伝学」
受精卵から成熟した個体になるまでの一連の過程を研究する学問を発生学といいます。
私の研究は、遺伝子の働きから植物の発生現象を理解していこうというものです。
研究材料としてイネを使っていますが、それは、イネが遺伝子の研究に向いているためというだけではなく、将来、品種改良などの応用研究にも活かすことを期待しているためです。
イネの花や葉の形成には、どのような遺伝子が働いて、つくられているのか。
それらの形がどういうふうにしてできていくのか。平たく言えば、そういったことを研究しています。
イネの穂や花の形が変化する突然変異体を使って研究を進めてきました。突然変異体とはある遺伝子の働きが壊れた個体のことをいいますので、突然変異体を詳しく調べたり観察することによって、原因となる遺伝子の役割を明らかにすることができます。
私がTONGARI-BOUSHI(トンガリボウシ)と名付けた3つの遺伝子の働きを明らかにするために、それら遺伝子の突然変異体をよく調べ観察しました。
その突然変異体の穂には、花が全く形成されなくなり、枝のみになってしまうことが判明しました。お米はイネの花からつくられます。
この研究によって、TONGARI-BOUSHI遺伝子は、正常なイネの穂をつくるために、最終的にはお米をつくるために、非常に重要な役割を果たしていることがわかったのです。
もともと、生物の生命活動を担う遺伝子に興味があり、大学院に進学する際に、どういう材料で遺伝学を研究するか考えました。
植物の発生学は、動物の発生学と比べると、あまり理解が進んでいなかったため、研究をする余地があるのかな、と植物の分野を選択しました。
ちょうど大学院に進学した2007年は、イネの全ゲノムDNAの配列が解読された比較的直後。遺伝子の研究で、全ゲノム配列の解読は重要です。
研究が大きく発展していく見込みを感じ、イネを研究材料に選びました。
常に向上心を持って難しいことにチャレンジしていくと同時に、楽しみながら、多くの人に関心・興味をもってもらえるような研究を行いたいと思っています。
研究者として、レベルの高い研究を目指すことは大切ですし、楽しみながら追究することで思いがけない面白い成果にたどり着くことがあります。
これまでは基礎的な研究に終始してきました。まだまだ未解明なところもあり、さらに深く突き詰めたい一方で、イネの品種改良や、生産性の向上につながるような応用研究にも挑戦したいと思っています。
研究室の学生と、顕微鏡を使ってイネの微細構造を観察する様子
品種改良では、地球の温暖化や異常気象に伴い、耐性のあるイネの品種をつくることは重要です。イネの形づくりをコントロールしながら、新しいイネの品種を開発できないものか、と思いをはせています。
※プレスネット2021年2月25日号より掲載
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投稿者名: プレスネット