プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院人間社会科学研究科准教授
小口 悠紀子さん
専門は日本語教育学
日本人も外国人もコミュニケーションで心地よく生きる社会に
Contents
私たちが学生のときに習う国語は、日本語母語話者を想定して教えている教科です。日本語教育は、日本語を第二言語(外国語)として学ぶ人(主に外国人)に教えることを指します。教育学的な観点はもちろん、言語習得や心理、文化、外国人に関する法律などさまざまな専門知識が必要で、これらの総称を日本語教育学と言います。
日本語教育を専門的に学べる大学は、世界にはほとんどありません。その中で広島大は日本語教育学専攻を作ったパイオニアで、日本語教育の多様な分野の研究者が多くいることで有名な大学です。私が広島大に進学したのも、その理由からです。
日頃は、日本語の文法習得や、どうしたら効率的に日本語を教えられるかという教授法の研究をしていますが、2018年の西日本豪雨の経験をきっかけに、地域の日本人と外国人がともに災害リスクについてコミュニケーションを取る重要性に着眼し、ともに集い、情報を共有しながら考える防災学習の実践と研究を始めました。
防災学習にはLEGOブロックやピクトグラムカードを用いました。私たちは豪雨災害の危険があると知ったとき、家族や友人たちとひんぱんに情報を交換しながら災害への備えや意識を高めていきます。しかし、このまちにきたばかりの人や外国人は危険な場所や過去の災害などローカルな情報を入手しにくいのが現状です。外国人が参加しやすく、参加者間の対話を促しやすいように、とブロックなどを用いることにしました。
外国人と日本人が接する場の一つに日本語教室があります。日本語教室は、日本人が「教える」、外国人が「教えられる」といった固定された役割と関係が生まれてしまいます。一方、今回、実践した防災学習では、LEGOブロックが上手い子どもが注目を浴びたり、災害経験のある外国人の話に、地域の日本人が耳を傾けたり、とコミュニティ内での役割が次々と変化していきました。その柔軟なコミュニケーションのあり方には、外国人の社会参加や共生社会実現へのヒントが詰まっていることに気付かされました。研究成果は海外でも公表、2021年度日本語教育学会奨励賞を受賞しました。防災学習のワークショップは、東広島市では、今後も年に2回行っていく予定です。参加していただけるとうれしいです。
日本語教育という専門性から、外国人市民の多い東広島市のまちづくりに貢献できるような研究をしていきたいと思っています。日本人にとっても外国人にとっても、コミュニティで心地良く生きることは大切です。コミュニケーションの力で地域の人と多文化共生の意識を醸成していくことができれば、と思っています。