プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
大学院人間社会科学研究科 准教授
熊原 康博さん
専門は自然地理学
地形から活断層や、人々の暮らしを読み解く
ヒマラヤ調査 インフラ整備や防災教育に活用
Contents
地形などの自然現象を調査する自然地理学の中でも、地震が起こりうる「活断層」の調査が研究の柱です。地震学の専門家が難しい数式を使う研究と違い、フィールドワークを中心に、地形や地層から活断層を調べています。
フィールドワークの場は、地球上最も標高の高いヒマラヤ山脈。大学院生の24歳のときから、毎年、現地を訪れて研究を続けています。
ヒマラヤには海がありません。プレート(岩盤)の境界を歩いて、ズレてしまった断層を調査できるのは、世界広しといえどもヒマラヤだけです。自然がそのまま残っており、崖がむき出しで地層がよく見えるのも特長です。直下型地震は活断層の動きで起こりますが、同じ箇所で起こる地層のずれと年代を調べることで、過去、どのくらいの間隔で地震が起こったのか、活断層がどこを通っているのか分かります。ヒマラヤは、1回で10㍍ずれるので、考察しやすいのがメリットです。
これまでの調査で、ヒマラヤ山脈沿いにあるネパールやブータンで、活断層がどこにあるのかをほぼ把握できました。活断層の分布図など、説明すべき資料はそろっており、今後、本にまとめていきたいと思っています。
研究の成果は現地のインフラ整備や教育にも役立てるつもりです。発展途上国は、インフラが脆弱です。現地の人に分布図を提供することで、発電所などの重要な施設を建設するときに、活断層の上を避けるなど、地震のリスクを軽減した都市計画プランニングをつくることができます。また、地震の原因が活断層であることを知っている現地の人は少なく、地震のメカニズムや、活断層の周期などを提示することで、防災教育の一端を担えればと思います。
地形からは、地震など災害の歴史だけではなく、先祖がその土地の特性を生かして、工夫してきた過程を読み取ることができます。歴史が専門の先生の協力で、学生らとフィールドワークを重ね、2020年に「西条地歴ウォーク」を、22年に「東広島地歴ウォーク」をそれぞれ出版しました。東広島の景観がどのようにつくられたのか多角的に分析することができます。
例えば、大きな河川がない東広島市は、ため池がたくさんあります。ため池がつくられた場所には、それぞれに生活の知恵が詰まっており、地形を見ることで、その背景を考察できます。
自分だけしか知らない新しいものを現地で発見したときの面白さですね。今まで見向きもされなかったものに、解釈と価値が付けられ、大きくクローズアップされたときの喜びはひとしおです。