広島大学の若手研究者に着目し、その研究内容についてインタビューしました!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大大学院先進理工系科学研究科助教
小池 みずほさんです。
研究テーマは地球惑星科学🌏
地球をはじめとする太陽系の惑星形成は45億年前までにほぼ完了しました。
その形成の初期の約44億~41億年前に、惑星には大量の隕石衝突の可能性があったことが、小惑星(ベスタ)から来た隕石の年代測定から分かりました。
従来は、誕生から6~7億年後の約39億年前に地球や月に大量の隕石が衝突したと推測されてきました(後期重爆撃説)。米国のアポロ計画で採取された「月の石」の年代測定などを基にしていました。
しかし、その時期に地球や他の惑星に隕石が衝突した証拠はなく、惑星軌道の計算結果などとの矛盾もあり、50年にわたり論争が続いていました。今回の発見は太陽系初期の歴史を書き直すことになるかもしれません。
地球で見つかった、火星と木星の間を回る直径約500kmのベスタから飛来したと思われる隕石を分析しました。隕石のリン酸塩化合物の中にわずかに含まれるウランが、時間の経過とともに壊れて鉛になっていく性質を利用。
微量元素を測る特殊な装置を用いて、ウランと鉛の存在比から100分の1mmの世界を解析、ベスタに隕石が衝突してからの時間を推定しました。
隕石は「宇宙からの手紙」ともいわれています。分析できたときは、見た目は何の変哲もない、ただの石ころが、45億年前の情報を残していることに感動しました。
左:研究に用いた隕石の写真
右:隕石の分析をした実験装置(東京大学大気海洋研究所の「ナノシムス」)
小さいときから宇宙が好きで、親にせがんでは天文台に連れて行ってもらっていました。
大学では、地球科学や宇宙物理を学びました。
その中で光の波長など遠い宇宙の観測よりも手元にモノがある、近い宇宙の世界を見詰めてみたい思いに駆られ、大学院から隕石の研究を始めました。
普通に生活をしていると、何十億年前とか何十億年先とかのことを考えることはないですよね。
でも、研究をしていると当たり前のように、その時代の世界を想像し、現実には見えない世界なのに、その時代にアプローチすることができます。
今回の研究の成果は、地球史とも大きく関係してきます。
地球に生命が誕生したのは39億年よりも前ですが、その時代に後期重爆撃説が正しければ、地球最古の生き物は、大量の隕石のシャワーを振り払って生き延びないといけませんから、生き物が生き抜くには矛盾点も指摘されていました。
もし、隕石の衝突がさかのぼれれば、隕石衝突後の静かな時代に生命が誕生したことになりますから、その問題をクリアすることができます。
ただ、あくまでベスタの隕石からの分析。
仮説を立証していくためには、もっと多くの惑星や小惑星を調べる必要があります。
研究を深めながら、いずれは太陽系の惑星の誕生と進化を調べていきたいと思っています。
プレスネット2020年9月24日号より掲載
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投稿者名: プレスネット