プレスネットでは、広島大学の若手研究者に着目しその研究内容についてインタビューしています!🎤
今回お話を聞いたのは
広島大学大学院医系科学研究科(医)助教
小田 康祐 さん
専門はウイルス学。立体構造を解析、ウイルスの本質に迫る
ウイルスの種類の一つであるパラミクソウイルスは、麻疹ウイルスやヒトパラインフルエンザウイルス(風邪の原因)、流行性耳下腺炎ウイルス(おたふく風邪の原因)、ニパウイルス(ヒトに感染する致死率の高いウイルス)など、人や動物に感染して感染症(病原性)をもたらす重要なウイルスが数多く含まれています。
現在のところ、ワクチン接種が有効なパラミクソウイルスは麻疹ウイルスや流行性耳下腺炎ウイルスに限られ、他のパラミクソウイルスに対して効果をもたらす薬はいまだなく、治療薬の開発が望まれています。
パラミクソウイルスは、高い病原性を発揮するのに必須となるアクセサリータンパク質と呼ばれるウイルスタンパク質を生み出します。
タンパク質は三次元の状態で機能を持っており、多くの複雑な機能を持つアクセサリータンパク質に関する理解は、まだ十分に進んでいません。
私はアクセサリータンパク質を標的にした治療薬の開発を目指し、このタンパク質の立体構造の解析をもとにしながら、病原性の解明について研究を行っています。
アクセサリータンパク質の立体構造を世界で初めて明らかにでき、その成果としてアクセサリータンパク質が感染細胞内で、どのように機能するのか、詳細に解明することができました。
ウイルス学会で研究成果を発表する小田さん
平たく説明すると、通常はウイルスが人に感染すると、自然免疫が働いてウイルスを排除しようとします。しかし、アクセサリータンパク質は自然免疫を抑制するように働いて感染を成立させ、人の細胞から外に出ることを促進させており、そのメカニズムを解明しました。
また、アクセサリータンパク質の立体構造をもとにして、抗ウイルス薬を設計できる可能性も見出しました。ワクチンの開発が困難なパラミクソウイルスの治療薬や予防薬を開発し、医学や社会に貢献することが夢です。
研究では仮説を立てて実験で証明していきます。予想外の実験データが得られることがあり、解釈が困難な場合もあります。専門分野以外のことに取り組む必要性も生じてきます。
ウイルス学会の様子
ただ、そのようなデータが得られると研究に深みが増し、詳細なメカニズムの解明につながります。研究をより面白くするためには、実験データの小さな変化を見逃さないことが大切です。
まだまだ分からないことが多いウイルスですが、日本の多くの研究機関は連携を取りながら、このウイルスを制圧するために緊急に研究を進めています。
広島大では、その中でできることを探し役割を全うすることを目指しています。
※プレスネット2020年4月30日号より掲載
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投稿者名: プレスネット